ベイルかイスコか…。最後は規格外の「個」がカギを握る
ところが2日に行われた前日会見で、マッシミリアーノ・アッレグリ監督は全く異なる見方を示した。「ベイルの方が、守備においてはきっちりポジションを取る。イスコには創造性があるが、こちらが狙えることのできる隙は多くなる」。
おそらくそれは、システムに起因する理由をさしてのことだろう。4-3-3の場合はウイングが守備に参加することでサイドに守備力が確保されるが、4-3-1-2だとサイドには数的不利が生じやすくなる。実質上はサイドハーフとサイドバックが連動して攻めるユベントスにとっては、間違いなく狙いどころになるだろう。そこを使って仕掛け、今季はスピードに難を見せているレアル・マドリーのCB陣の裏を突きたい。
ただ中盤では、イスコを置く分レアル・マドリーに数的優位が生じる。そこを2枚のボランチだけに守備をさせていれば、当然ピンチになる。それは全体の守備組織を収縮させることで対応することになるだろうが、もし先取点を取られるとなるとユーベも前に行かざるを得なくなり、組織の収縮が難しくなる。レアル・マドリーの弱点を突いて先手を取れるかが、戦術上でも非常に重要なポイントとなりそうだ。
中央のエリアでの勝負をものにするという意味では、やはりパウロ・ディバラの存在もキーとなりうる。トップ下をホームポジションとし前後左右に動き、体を寄せた相手をワンタッチで抜いて背後を取るチャンスメイクでカゼミロを無力化できれば、レアル・マドリーのバランスは屋台骨から崩れる。逆にここをカゼミロに抑えられるようだと、ユーベにとっては攻撃のバリエーションを大きく減らすことになるだろう。
そして、それぞれが戦術、技術を突き詰めた末に勝負を決めるのが、規格外の選手の存在である。月並みになるがレアル・マドリーではクリスティアーノ・ロナウド、ユベントスではゴールを守るジャンルイジ・ブッフォンの名が挙げられる。立場は表裏逆ながら、数少ないチャンスでの決定的なシュート、あるいはセーブが勝敗を左右するものになるというで意味で両者は同義の存在だ。
「これが自分にとっては最後のチャンスになる」とブッフォンは会見の席で語っていたが、果たしてその通り集中力の高いセーブで優勝をもぎ取ることができるかどうか。
ピッチの全域で、やはり見所は多い。戦術的な駆け引きからの攻撃の末に、優勝ををもぎとることができるのはどちらのチームになるのか。
(取材・文:神尾光臣【カーディフ】)
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