W杯イヤーへ。待ち受ける2つの新たな競争
新たなライバル・倉田は、3月のUAE戦(アルアイン)で後半途中に香川との交代でピッチに立った。持ち前のアグレッシブさを前面に押し出し、ボスニア人指揮官にポジティブな印象を残すことに成功している。とはいえ、国際経験や実績はまだまだ乏しいところがあり、日本の命運を左右する重要なイラク戦で先発抜擢というわけにはいかない。やはりここは香川がしっかりとゴールに直結する役割を果たし、存在感を示す必要がある。
「僕は明らかにイラク戦に向けて準備したいし、勝っていくことが大事だと思っている。イラク戦はアウェイでピッチも悪いし、暑さもあって、すごくタフなゲームが待っている。ピッチコンディションは行ってみないと分からないところはあるけど、1本のミスでやられる世界。そこは1人ひとりがより厳しく詰めていけばいいんじゃないか」と10番を背負う28歳のアタッカーは細部ににこだわり、緻密なプレーを心がけていく。
3月のタイ戦(埼玉)では今回の最終予選で初めてとなる得点を叩き出しており、シリア戦、イラク戦でも連発が期待される香川は、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が就任してから2015年9月のロシアW杯アジア2次予選のカンボジア戦(埼玉)とアフガニスタン戦(テヘラン)、あるいは2016年3月の同シリア戦(埼玉)と6月のブルガリア戦(豊田)と連続ゴールを決めるケースが続いている。
今回もその流れを持続し、シリア戦、イラク戦と得点を奪い続けていけば、ドルトムント側の評価も自ずと上がる。そのまま来季に突入して再ブレイクしてくれれば、ロシアの大舞台へ踏み出そうとしている日本代表にとっても理想的なシナリオだ。香川には今回の2連戦を特に大事にしてほしい。
「前回のイラク戦(2016年10月=埼玉)は出番なしに終わりましたけど、別に苦くはないですし、チームが勝ったんで問題はないと思ってます。その試合を振り返りながら、次のイラク戦に向けてどう勝つかというのをみんなで徹底していければいい」と香川は全てを前向きにつなげようとしている。
こうした姿勢は、何か起きるたびに精神的なダメージを受けて落ち込んでいた以前の彼とは明らかに異なる。たくましさとタフさを身に着けた日本代表の攻撃の要に、チームを力強くけん引していってもらいたいものだ。
(取材・文:元川悦子)
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