どうしても先発で出たかったゲーム。しかしベンチスタートに
武者震いで眠れなくなるのではないか。タイを飛び立って日本へ向かうまでは、こんな状態になってもいいと思っていた。しかし、青山直晃を待っていたのは、まったく逆の夜だった。
「昨日は眠れなかったですね。今日だけは先発で出たかった。外されるとわかったときは、正直な話、本当に悔しかった」
川崎フロンターレとのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝トーナメント1回戦。ホームで5月23日に行われたファーストレグを1‐3で落としたムアントン・ユナイテッドFC(タイ)は、絶体絶命の状況に追い込まれていた。
大逆転でのベスト8進出へ求められるのは、敵地・等々力陸上競技場で3点差をつけての勝利。それでもサッカーで不可能なことはない。タイへ渡って3年目。不動のセンターバックを担ってきた青山は、具体的な試合展開を思い描きながら29日に来日した。
「絶対に3点をもぎ取って勝ってやる、という気持ちでこっちに来た。最初に(自分が得意とする)セットプレーからゴールすれば、まだわからないと思っていたので」
迎えた決戦前夜のミーティング。ムアントンのタワン・スリパン監督は、最終ラインの要を先発から外す英断をくだす。国内リーグ戦を含めて、チームは泥沼の5連敗を喫していた。何かを変えなければ、という思いに指揮官は駆られていたのもかもしれない。
試合は1‐4で完敗。2試合合計で2‐7のスコアで、タイ王者は姿を消した。青山が投入されたのは後半27分から。すでに大勢は決していた。試合後の公式会見。青山を先発から外した理由を聞かれた指揮官は、体調不良を理由にあげている。
「いまそう言ったんですか? 正直、わからない。とにかく、もう終わっちゃったので、僕としては何も言えないですね」