ベテラン陣の言葉の力。“中堅世代”の変貌が代表の起爆剤に
長谷部誠(フランクフルト)や川島、本田ら日本代表のリーダー格の選手に共通するのは、全員の心を動かせる「影響力」と「存在感」を備えている点だ。
例えば、川島であれば、苦しい時の心の持ちようを的確にアドバイスしてくれる。今回は落選の憂き目に遭った清武が「永嗣さんと話す機会がありましたけど、目の前の試合1試合を全力ですることが一番大事だと。いろいろ考えても結局、いいプレーができないし、どれだけ目の前の試合に集中してできるかがすごい重要だという話を聞けて、やっぱり頼もしい先輩だなと強く思いました」と語っていたことがあったが、迷いや戸惑いを抱えた若手を前向きにさせ、要所でプレーに集中させるような声かけができる。それが川島の強みである。
本田にしても同様だ。2016年6月のボスニア・ヘルツェゴビナ戦(大阪・吹田)で初キャップを飾り、11月のオマーン戦(カシマ)で代表初ゴールを挙げた小林祐希(ヘーレンフェーン)が「『失敗した数が自分の自慢だ』って本田さんが言ってるけど、ホントにその通りだと思う」と語気を強めていたが、国を背負った経験の少ない選手には、その一言が大きな安心材料になるのだ。
ピッチ上でいいパフォーマンスを見せて勝利に貢献することはサッカー選手にとっての最重要テーマだが、チームのために何をすべきかを瞬時に察知して動ける力を養うことも重要な要素。そういった器や懐の大きさを20代半ばのメンバーが体得してくれれば、日本代表はより強いパーソナリティの集合体になれる。原口、大迫、久保という伸び盛りのアタッカー陣にはその自覚をより強く持ってほしい。
「チーム全体としてやるべきことは少しずつ整理されてきているかなと。ただ、もっともっと結果がついてくれば、個人個人がもっと自信を持ってプレーできる。今はまず結果を出すことが一番大事じゃないかなと思います」と大迫は自らに言い聞かせるように話したが、ゴール数を増やして精神面の余裕が生まれ、周りを動かすアプローチもできるようになれれば、まさに理想的な循環だ。
今回の6月2連戦で、日本代表の中堅世代がポジティブな方向に変貌できるかどうか。大きな期待を込めて見守りたい。
(取材・文:元川悦子)
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