5月の公式戦は全勝。昨季までとはことなる“強さ”
誰がここまでの変貌ぶりを予想できただろうか。公式戦で2勝4分け1敗となかなか勝ち切れなかった4月から一転して、5月は破竹の6連勝でフィニッシュ。昨シーズンまでとは異なる“強さ”を、川崎フロンターレが身にまといつつある。
リーグ戦はすべて完封で3勝。そのなかには敵地で王者・鹿島アントラーズに3‐0で快勝した一戦も含まれる。ACLではグループリーグを1位で突破し、決勝トーナメント1回戦ではムアントン・ユナイテッドFC(タイ)に2戦合計7‐2のスコアで圧勝。8年ぶりとなるベスト8進出を果たした。
ターニングポイントをあげるとすれば、4月21日の清水エスパルス戦になると大黒柱の36歳、MF中村憲剛は振り返る。FW金子翔太にJ1通算20,000ゴールを決められ、後半に入って逆転するも終了間際の最後のプレーで2‐2の同点に追いつかれた、どちらかと言えば後味の悪いドローに終わった一戦だ。
「オニさん(鬼木達監督)から言われているのは『握れ』ということ。だから、どのように握るかですよね。前半は自分たちがボールをもって、相手を走らせることができてきている。その結果として後半はいけるかなというのは、僕だけじゃなくてみんなが感じている。それは相当大きいと思う」
エスパルス戦を直前に控えたミーティングで、今シーズンから指揮を執る鬼木監督はボールを保持する戦い方への回帰を求めた。約5年間の風間八宏(名古屋グランパス監督)体制のもとで培われた、徹底的にポゼッションにこだわるスタイルには実は新たな“エッセンス”が加えられていた。
ヘッドコーチから昇格した鬼木監督は前任者が築きあげたスタイルを踏襲したうえで、攻守の切り替えの速さや球際におけるハードワークを徹底することを強く要求した。体制が変わったなかで、選手たちはどうしても新たな指示を実践してしまう。
そして、エスパルス戦の前が頃合いと判断したのか。時計の針がハードワークに大きく振れかかったことを承知のうえで、指揮官は原点への回帰を訴える。結果として慣れ親しんだポゼッションに球際の強さや泥臭ささが融合された、新たな戦い方がピッチで体現され始めた。