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川島永嗣が語る「葛藤の1年」。求めるものは「もっと先にある」と気づいた【インタビュー】

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

「思い描いてきたものを達成できた」という感じではなかった

―――フランスリーグのアタッカーの印象は?

K ベルギーでも飛んでくるシュートなどは違うので、日本とは違う感覚で、キーパーとしての役割をより求められる中でこなしていかないといけない、という中でやっていましたけど、(フランスでは)選手のサッカーIQも技術もみんな高いし、そういう相手とやれるのは、今までとは全然違うと感じますね。

―――自分も研ぎ澄まされる?

K 自分のスタンダードを変えていかないといけないと感じます。このスタンダードで自分も勝ち残っていけるようにやっていかないといけないし、そういう基準を肌で感じられるのは大きいんじゃないかと思いますね。

 代表でもそのような機会はありますけど、対戦できる回数が年に一回なのか、3、4回なのか、回数によって違ってくる。そういう相手と対戦する回数が多ければそれだけ自分が感じたことを、次の試合で何ができるかという基準をもってやれる。

 一回だけ経験して何か答えが出る、ということはおそらくないと思うんです。何回も対戦するから、自分の中の基準が変わっていって、「こういう中でこういうようにやらないといけない」というように自分の実になっていく。そういう意味で、スタンダードにそういう相手とやれるというのは、自分にとって大きいのかな、と思います。

―――五大リーグでプレーしたかったという目標を達成したという充実感は?

K う…………ん。……それも考えていたけれど、結局やっぱり記録というか、そんなのはどうでもいいというか……。いままで僕は五大リーグで日本人のGKがピッチに立っている姿をずっと想像してきたし、その日がくるのを自分の中で心待ちにしてきたし、そんな日が来たらいいな……とすごく思っていたけれど、自分が思い描いているものとか、自分がパッションをもってやっていることって、それだけじゃないんじゃないかな、と。

―――それに気づいたのは?

K 試合に出てみて、大きな一歩を自分の中で踏み出した、またひとつ結果を出せた、と思ったけれど、でもそれは自分の中で、「自分が今まで思い描いてきたものを達成できたんだな」という達成感、ではなかったんですよね……。

―――それはなぜだと?

K 自分が思い描いているものは、もっと先にある、ということなのかな、と。

 でもうれしかったですよ。というか、その一言では表せないような……試合に出たときは奥さんとも喜んだし、これまでチームがないときも、試合に出られないときも多くの人に支えられてきたし、そういう人たちにはすごく感謝しているし、そういう支えがあったから自分はその一歩を踏み出せたんだと思うけれど、自分が目指しているのは、そういう記録、のようなものではなくて、もっとこう……人の心に残るようなことをやりたいということなのかな……と。

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