1-3-4-3というオプション生んだ相互作用
ルイス・エンリケを支えたフィジカルトレーナーは、サッカーそのものを扱う新たな視点での選手の状態管理理論を駆使してFCバルセロナを進化させ、3年で9タイトルという輝かしい成功をもたらした。
チームを有機体の集合と捉え、怪我や過密日程による選手のコンディションの乱れ、移籍やチームの若返りによるポジションのコンバートなどのネガティブな条件も複雑性の概念で見れば「チームが成長するための条件」とポジティブに捉えたのだ。
事実、今季のバルセロナはダニエウ・アウベスのユベントスへの移籍によって本職はインテリオール(インサイドハーフ)のセルジ・ロベルトが右サイドバックを務め、個人として大きな成長をみせた。
チームとしてもインテリオールの選手がサイドバックでプレーすることで変則システムとしての1-3-4-3というプラスアルファの戦術オプションを手に入れ、相手チームにとっては手を焼く要素の一つとなった。
これもポルの哲学にある「相互作用から生まれる、以前には存在し得なかった新しい要素」として見ることが可能だ。この3シーズンのバルセロナの進化と成功は、従来のフィジカル理論の概念を根底から否定するラファエル・ポルの哲学が欠かせないものだったことは明白だ。
(文:坪井健太郎)
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