カバーニ、イブラ超えはならず。マクスウェルは有終の美
そしてあと数秒でアディショナルタイム!という瞬間まで、PSGの猛攻をしのいだ彼らアンジェの戦士たちにも、賛辞のみが贈られた。
別の取材で南仏にいたため、この試合は残念ながらテレビ観戦することになったのだが、『アンジェ市民であることを誇りに思う』と染め抜かれたマフラーを掲げた2万人のアンジェサポーターが、最後まで声援を贈り続けていた姿は、画面で見ていても感動的だった。
「結果には反映されなかったが、チームは自分たちが持てるクオリティを十分に発揮してくれたと思う」というムーラン監督のコメントも、また泣けた。
PSGは、史上3クラブ目となるフランス杯3連覇を達成。これまで通算10回でマルセイユと並んでいたが、11回目の王者に輝き単独の歴代最多優勝クラブにのし上がった。
この試合の前まで今季通算49ゴールをマークし、イブラの持つ年間50 得点を追い抜くかどうかが期待されていた主砲のカバーニは、数々の惜しいチャンスはあったがやっぱり決めきれなかった。“やっぱり”などと言ってはファンの方には失礼だが、ここ一番、という肝心な場面で得点を決めることの少ない、言ってみればカバーニらしい顛末だった。
しかし相手GKルテリエ(皮肉にも彼はPSGの育成所出身!)の渾身の守りも素晴らしかった。PSGでプロ入りが叶わなかったときには敗北感を覚えたというが、この試合での彼は、決してPSG軍団に負けていなかった。
この試合は、11-12シーズンの冬から5年半在籍したマクスウェルが、PSGのユニフォームを着て戦う最後の試合でもあった。
彼はカタール勢が参入してチーム再建を始めた時の第1期生とも呼べるメンバーで、オランダ、イタリア、スペインで数々のトロフィーを勝ち取った経験は、フロントの期待どおりフランスでも存分に活かされた。
昨シーズン、彼にインタビューさせてもらう機会があったが、見た目の印象通りのスーパーナイスガイで、どのクラブでも仲間やコーチ、スタッフらに愛されていたのがありありと想像できた。そのインタビューのときには「今季で最後。もうそれは決めている」と話していたが、一転、今季も残ることを決めていた。
終了のホイッスルが鳴ったあと、こみあげる涙を懸命にこらえていたマクスウェルの姿からは、このクラブに心底愛着を感じていた彼の思いがひしひしと伝わってきた。