目標は「世界一」。チーム一丸で挑むW杯
選手たちにも「君たちがプレーすることで国民に希望を与えられるのでは?」と尋ねてみたが、ペニャランダは「うーん…」としばらく考えた後、「それについてはあまり答えたくないな」と言葉を濁した。
その直後、チームの広報から「選手たちはデリケートな精神状態で戦っているので、今は国内情勢に関する質問はしないでほしい。確かに君の質問はポジティブなもので、本来は問題ないのだが…すまない」と指摘されてしまった。ペニャランダにも謝罪したが、彼らが団結している理由のひとつに「祖国ベネズエラ国民のために戦うこと」があると考えて差し支えないのではと思う。
キャプテンのエレーラは、決勝トーナメントでの戦いを見据えて宣言した。
「W杯での目標は、もちろん世界一になることだ。この目標は僕たちのキャリアにおいて大きな節目になるだろう。これまでのところはうまくいっていると思うし、トロフィーを獲得できると信じている。僕たちは大きな自信を感じているんだ。これからはもっと厳しい戦いになるだろうね。簡単ではない。それでも優勝のために努力を続けるだけだよ」
バヌアツ戦でPKを蹴ってゴールを挙げた小柄なGKウイルケル・ファリニェスも「僕らは一歩一歩進んでいく。まずは目の前の試合に集中する。それで優勝することができれば、本当に幸せなことだ」と言う。
ゴールを量産するコルドバも「チームを助けられてとても嬉しい。僕がゴールを決められるのはチームメイトの助けがあってこそだ。今この瞬間を楽しんで、もっと上までいきたい。何が起こるかはわからないけど、もっとたくさんのゴールを決めて喜びたい」と、勝利への希望に溢れている。
彼らは団結し、世界制覇を見据えて懸命に戦っている。これまで野球に隠れ、あまり注目されてこなかったベネズエラのサッカーだが、U-20W杯で結果を残せば明るい未来が拓けてくるかもしれない。それは個人としてのキャリアアップのみならず、ベネズエラ国民の希望としての代表チームになることも含めて。
ベスト16で日本と対戦するU-20ベネズエラ代表は大きな覚悟を背負っている。チーム一丸となって彼らを打ち破ることができれば、U-20日本代表にとっても大きな成長のきっかけになるだろう。
(取材・文:舩木渉【韓国】)
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