指揮官からのメッセージ。代表の活躍が国民の希望に
ベネズエラは現在、国内情勢の不安定さが連日報道されている。独裁体制を築くニコラス・マドゥロ政権に業を煮やした多くの国民が立ち上がり、政権打倒などを掲げて何十万、何百万という人々が全土でデモ活動を展開している。それを政府が後ろ盾となっている民間のギャング団が弾圧、住民側からは多数の死傷者が出ており、憎悪の炎は大きくなるばかり。報復の連鎖は止まらず、もはや泥沼の様相を呈している。
ここ数年、ベネズエラでは国の財政が破綻状態で、1000%を超えるハイパーインフレ状態が続く。失業率は上昇の一途をたどり、食糧不足、治安悪化、停電など、国民はまともな生活を送れていない。ただマドゥロ大統領が君臨する独裁政権は、その責任を国民に押しつける、権力の拡大を止めようとしない。
国会の立法権の剥奪を試みたり、大統領選出馬阻止を目的として野党のリーダーに15年間の政治活動禁止を言い渡したり、しまいには今月初旬にマドゥロ大統領が新憲法制定の方針を明らかにした。ここに隠された真の目的は大統領権力の拡大と国民のさらなる弾圧に他ならないと見られている。
とはいえ国際社会は、数年前から深刻な財政問題を抱え、デフォルトが噂されるベネズエラの崩壊を望んでいない。アメリカや中国などにとっては重要な貿易相手であり、世界最大級の産油国でもあるベネズエラの政権が崩壊すれば、多くの国が大打撃を受けかねないからだ。
そんな状況でメキシコ戦後の記者会見に出席したドゥダメル監督は、「私はこのチームを代表して祖国にメッセージを送りたい。選手たちには慎重さがあるが、全力を尽くしていて、ベネズエラの代表になれたことを誇りに思っている。国を守り、より良いベネズエラを目指すすべてのベネズエラ人と夢は同じだ」と述べた。
直接的にベネズエラ国内の政治などに言及したわけではないが、マドゥロ政権と相反する立場にいると示したととれる発言だった。選手たちがU-20W杯で活躍すれば、国民に誇りと希望を与えることができると考えているようだ。