「いまは若いし、どんどんアグレッシブにトライしてほしい」(川口能活)
たとえば5月6日のセレッソ大阪戦。試合終了間際に清武弘嗣がペナルティーエリアのぎりぎりから放ったシュートは味方の足に当たって大きくコースを変えて、それでも枠のなかへ飛んできた。
中村は体勢を崩しながらも必死に踏ん張り、ジャンプしながら左手をボールに触れさせてコーナーキックに逃れた。川口が指摘した細かくステップを踏む技術を、さらにスケールアップさせていたわけだ。
この場面ではボールという獲物を追う、まるで獣のような反応の速さも見せている。5月20日のジュビロ磐田戦では中村俊輔の十八番、直接フリーキックも完璧な反応から弾き返した。
川口は神懸かり的なセーブを連発したアトランタ五輪出場を決めたアジア最終予選から、「炎の守護神」という異名とともに絶対的な存在へ登り詰めた。若い選手には欠かせないプロセスだと指摘する。
「いまはまだ年齢が若い分、勢いもあると思う。その勢いがあるときにインパクトを残して、自分はこういうゴールキーパーだとアピールしていけば、周囲からの信頼も勝ち得られる。壁にぶち当たったときは、上手く軌道修正すればいい。いまは若いし、どんどんアグレッシブにトライしてほしい」
すでに中村は、レイソルの最後尾で絶対的な存在感を放ちつつある。何度もチームの窮地を救ってきたからこそ、不用意な失点を喫したアルディージャ戦では取り返してやろうと周囲が逆に奮起した。
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