五輪からステップアップした先駆者・川口能活が語る中村航輔
五輪で演じた好パフォーマンスを手土産にするかたちで、年齢無制限となるA代表での戦いへステップアップを果たした先駆者として川口能活(SC相模原)があげられる。
1996年のアトランタ五輪。いまも「マイアミの奇跡」として語り継がれるブラジル代表戦で、1‐0の完封勝利の立役者とった川口は同年8月のウルグアイ代表戦で、21歳にしてA代表に抜擢されている。
以来、ゴールキーパーでは最多の116キャップを獲得。4度のワールドカップ代表に選出されたレジェンドと中村は一度だけ、2015年11月23日にJリーグのピッチで敵味方として対峙している。
舞台はJ2最終節。川口はその年限りで退団するFC岐阜の、中村は出場機会を求めて期限付き移籍していたアビスパ福岡のゴールマウスをそれぞれ守っていた。
試合は4‐1でアビスパが快勝し、3位を確保してJ1昇格プレーオフに進出。最終的に昇格を果たしている。20歳も年下の中村への印象を問われた川口は「いいキーパーですよね」と、こう続けている。
「僕が20歳くらいのころは、井原(正巳)さんや小村(徳男)さんに支えられながらも、自分が将来、代表のゴールマウスを守りたいという野心をもってプレーしていた。彼もそういう気持ちでやってほしいし、そうなる資質はあると思う」
図らずも中村は、胸中に野心にも近い思いを抱いていた。レイソルでビッグセーブを連発してきた今シーズン。A代表入りへ向けた、執念にも近い本音を吐露したことがある。
「そこを目指すのは、当たり前のことだと思っているので。何とかして入りたい」
技術面はどうか。「彼が考えてやっているかはわからないですけど」と前置きしたうえで、川口はゴールキーパー独自の視点で中村のセービングをこう絶賛していた。
「マニアックな話になると、細かくステップを踏みながら、上手くポジション修正をしてシュートコースに入れる技術をもっている。ただ単にセーブしているだけではないと思います」