圧巻だった堂安の密集突破
ゾーンの守備ブロックを組んで待ち構えるイタリアは、どっしりと落ち着いていた。日本にボールを持たせても、最後のところは締め上げて何もさせないという守り方である。隙があるようにみえて、日本のパスワークに振り回されていないので、なかなか穴が開かなかった。
しかし、日本は堂安がゾーンの隙間でパスを受け、捕まる前にさばいて動き、こじ開けにかかる。それでもイタリアは最後のところは死守していたが、遠藤のピンポイントのクロスを堂安が合わせて1点差。さらに堂安が密集にドリブルで突っ込んで同点ゴール。イタリアは堂安1人にやられた格好である。2点目は圧巻だった。
あの狭い密集地帯にドリブルで入っていける選手はなかなかいない。その発想すら出てこない。メッシやディバラなどアルゼンチンのアタッカーが得意なプレーだが、左足にボールをつけたまますり抜けていくドリブルは、大きなイタリア人DFにとって対処が難しかったはずだ。いっけん無謀にも思えるが、本人は何度も成功させてきたプレーなのだろう。それが世界大会でも通用したわけだ。
国内では通用しても、世界大会では通用しないプレーがある。一方、どこへ出しても通用するプレーもある。世界大会で通用したプレーは、その選手がどこまで行けるかの可能性を示してくれる。同時に日本の育成年代のプレーヤー、指導者の指針にもなる。堂安の2点目は、日本人だから無理なプレーなどほとんどないこと、独自の才能を伸ばすことの重要性を教えてくれたのではないか。
(文:西部謙司)
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