「マラドーナかメッシを見ているようだった」圧巻の2点目
圧巻だったのが、後半5分の2点目だ。同じガンバの盟友・市丸瑞希(G大阪)が前目に出してきたパスを「前へ行け」というメッセージだと受け取った背番号7は、3人のDFとGKがいることを承知でドリブル突破に挑んだ。面白いようにスルスルと相手をかわすと、最終的にはGKの逆を取る形でゴール。
「前半から相手が遅いなと思いながらドリブルしてたんで、調子がよかったのかなと。相手に当たってましたけど、俺のゴールです」と本人も強調。小川のユニフォームを掲げて喜びを爆発させた。
このような仕掛けからの得点は堂安の最も得意とするところ。視察した日本サッカー協会の西野朗技術委員長も「マラドーナかメッシを見ているようだった」と驚き半分にコメントしたが、アジアMVPの卓越した打開力と攻撃センスが世界の大舞台で発揮されたのは特筆すべき点だ。
U-20W杯のグループステージで3ゴールというのは、柳沢敦(鹿島コーチ)、高原直泰(沖縄SV)、平山相太(仙台)といった先輩FWたちも果たせなかったこと。それだけ堂安は異彩を放っている。ガンバの先輩・遠藤保仁や今野泰幸もこの大会でブレイクしてA代表にステップアップしているが、堂安も同じ軌跡を辿ってくれれば最高だ。それだけのポテンシャルの高さを彼は強烈に印象づけた。
背番号7が多彩なゴールパターンを示したのに加え、遠藤や市丸らと息の合った連携を見せたのも前向きな材料と言っていい。「あのアシストのシーンは、自分がカットインしている時に律の動きが見えたし、点と点が合わせられた」と遠藤が言うように、攻撃陣の連動性とコンビネーションは試合を重ねるごとに高まっている。
実際、遠藤のいる左サイドは杉岡、原輝綺(新潟)と3人が絡みながら何度かいい形を作り出していたし、遠藤自身もドリブル突破より中に絞って杉岡に高い位置を取らせることを第一に考えてプレーしていた。以前の背番号11は縦へ縦へ行くばかりで周りが見えていないプレーが多かったが、世界の大舞台で臨機応変さを表現できている。それは大きな前進だ。こういう選手がいるから堂安も光る。小川を失った日本攻撃陣に新たな光明が差したのは間違いない。