指揮官の期待を背に受けて90分フル出場
米本を先発として送り出した篠田善之監督も、万感の思いを胸中に募らせていた。米本がスペインで手術を受けた直後には「精神的にもきついと思うけど、彼ならば必ずピッチに戻ってくる」と熱いエールを送った指揮官は、レイソル戦を前にある覚悟を決めていた。
「自分のなかでは、彼は90分間できると思っていた。多少無理でも、ピッチのうえに最後まで立たせたいという思いがありました」
たとえるならば、J1の戦いへステップアップするための最終試験。指揮官の期待を背に受けた「7番」は激しく、勇敢に戦った。リーグ戦で出場機会が少なく、プレーに飢えているレイソルの外国人トリオ、ディエゴ・オリベイラ、ハモン・ロペス、そしてドゥドゥと真っ向から対峙した。
特にオリベイラとは幾度となく肉弾戦を繰り広げ、後半20分に米本がイエローカードをもらった。1点リードで迎えた後半アディショナルタイムには、オリベイラが振りあげた右足が米本の顔面を直撃しかけるあわやの場面もあった。
それでも、怯まない。サッカーができなかった時期に比べれば、ピッチのうえに立てる時間がどれほど幸せなことか。チームの勝利のために逃げなかった米本の勇気が、逆にオリベイラのファウルを誘った。
「相手がイライラしていたので、逆にありがたかったですね。ああいう相手とやるのはすごく楽しいけど、イエローカードがちょっと余計でした。ああいう場面でファウルなしでボールを奪えるように、いろいろと駆け引きをしながら突き詰めてやっていきたい」
2度目の大けがを負った影響もあって、出場資格のあった2012年のロンドン五輪の舞台に立つチャンスを逃した。当時の心境を、こんな言葉で表現したこともある。
「2回目にやったときは『サッカーをやめようか』というくらい落ち込んだこともあったけど……やっぱりサッカーがやりたいという気持ちが一番でした」