「自分に関わってくれたすべての人に感謝したい」
左足がつっていた。これまでに2度、2010年と2011年にひざの前十字じん帯を損傷し、それぞれのシーズンをほぼ棒に振った古傷。それでも、FC東京のMF米本拓司は充実感を覚えていた。
「不安はありましたけど、ベンチのメンバーも準備してくれていたので、すべてを出し切ろうと。いけるところまでいって、足がつったりしたら交代しようと思っていたけど、体力的にもってくれたし、最後は何とかごまかしながらできましたね」
柏レイソルのホーム・日立柏サッカー場で24日に行われた、YBCルヴァンカップのグループリーグ第6節。右ひざの前十字じん帯断裂および内側側副じん帯損傷の大けがから復帰後で初めて、米本は先発フル出場を果たした。
相手選手へタックルした刹那に右ひざが絶望的な悲鳴をあげたのは、昨年7月23日の川崎フロンターレ戦。3度目の悪夢に見舞われても、しかし、米本は必死に前を向いた。
翌8月にはスペインへ渡り、バルセロナ市内のオスピタル・キロンで手術を受ける。FCバルセロナの選手たちや、2011年には右ひざ半月板を損傷した日本代表FW本田圭佑(当時CSKAモスクワ、現ACミラン)の手術を執刀してきた世界的なひざの権威、ラモン・クガット医師に復活を託した。
診断の結果は全治8ヶ月。そのまま最新鋭の理学療法機器がそろったオスピタル・キロンでリハビリも開始した。年が明けて迎えた4月30日。FC東京がU‐23チームを参戦させている、J3のAC長野パルセイロ戦の後半32分からピッチに立った。
以来、J3のFC琉球戦で今度は先発。10日の大宮アルディージャとのYBCルヴァンカップではトップチームで途中出場と、段階を踏みながらハードルを高く設定しては確実にクリアしてきた。復帰へ向けて周到なプランを練ってくれたチームに、米本は感謝の思いを寄せる。
「変な言い方かもしれないですけど、本当に大事に、段階を刻みながら僕のことを扱ってくれたので。そのなかで90分間出られたことで、チームメイトやトレーナーをはじめ、自分に関わってくれたすべての人に感謝したいですね」