イタリア相手に試されるしたたかさと老獪さ
小川という攻撃の大黒柱が離脱した今、彼が中心となってチームをまとめていかなければ、16強という最低ノルマもクリアできなくなってしまいかねない。今こそ坂井には、2014年ブラジルW杯にトレーニングパートナーとして帯同した経験値を最大限生かしてもらうしかない。
「ブラジルの時は1分1敗で後がない状況で3戦目に挑みました。それでもみんな前向きで、しっかりと声を掛け合っていた。こういう世界大会は中2日、中3日ですぐに試合が来ちゃうんで、練習やそれ以外の場所でどれだけ選手同士が喋るか、コミュニケーションを取るかが大事になってくる。今回はブラジルの時と違って初戦勝ってるし、残り1試合で勝ち点を取ってしっかりトーナメントに行くだけなんで」とキャプテンは大舞台の貴重な体験を糧にするつもりだ。
攻撃陣にはバルセロナの下部組織でジュニア時代を過ごし、卓越した国際経験や駆け引きのうまさを誇る久保建英がおり、最終ラインには冷静沈着さを武器とする中山雄太(柏)と冨安健洋(福岡)が陣取っている。そこに坂井も加わってチーム全体が明確な戦い方を実践できれば、苦境を打開する道は自ずと開けてくるはずだ。
日本人が一番苦手としている「したたかさ」「老獪さ」をいかにして結果につなげるのか。イタリア戦は彼らの賢さとクレバーさが問われる一戦だ。2020年東京五輪、そして2022年カタールW杯以降につながるようなメリハリの利いた好ゲームをぜひとも見せてほしいものである。
(取材・文:元川悦子【天安】)
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