CLのグローバル化の波に飲まれたFAカップ。価値低迷の要因に
いやはや結局はさもしい自慢話になってしまったことは切にお許しいただき大目に見ていただくとして、この(FAカップに対する)ヴェンゲルの思いの丈は、決して彼だけのものではない。2000年にそのヴェンゲルを相手取ることになったリヴァプールの将、ジェラール・ウリエは、マイクル・オーウェン以下を前にこうハッパをかけたという。
「いいプレーをすれば今の君たちは無敵だ。世界最高の“TV放映イベント”でプレーできるプライドと喜びを表現すればそれでいい」
そしてヴェンゲルの返答はといえば…、「我がプレーヤーたちはこう言っている。対スパーズ準決勝でさえ、ワールドカップの決勝戦などとは比べ物にならないプレッシャーと誇りを感じた、と。この世界に、同じスピリット、同じポジティヴな情熱でチームがひとつになれるイベントは、このファイナルを置いて他にない」!
そんな、今振り返ると仰々しいほどのかつての「FAカップ礼賛談話」が今も頭の隅っこで折に触れてこだまする筆者だからこそ、近年の“降格イメージ”がつとに恨めしくて仕方がない。さて、当時と今とでは何かが変わっているか? レベル、多様性、技術的・戦術的進化…確かに。だが、問題の本質はそんな“目に見えるあざとさ”ではない。
言うまでもなく、元凶は今や世界最高の“スーパーリーグ”化したUEFAチャンピオンズリーグ、そのファイナルの“我が世の春”である。要するに、音を立てて傲然と加速するグローバル化の大波。そして、当初こそFAカップ覇者に授けられていたチャンピオンズ参戦権も、いつの間にかUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)の方にシフトダウンされて…。
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