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マンU、モウ1年目は「成功」にあらず。EL制覇も、遠ざかったユナイテッドらしさ

text by 山中忍 photo by Getty Images

来季は本心で「成功」と言えるシーズンを

 モウリーニョは「生身の人間には無理」とまで言いながら、過密日程への不満を繰り返してもいた。たしかに、EL決勝に1週間の準備期間があったアヤックスに対して自軍は中二日。相手よりも10試合多い今季64試合目でもあった。にもかかわらずのEL優勝は讃えられて然るべきだ。

 しかしながら、指揮官に同調して「超人的な日程に耐えての優勝」とまで賞賛は出来ない。同じプレミア勢がEL王者となった2013-14シーズン、チェルシーはコミュニティシールドから数えて68試合目に欧州での決勝を戦った。

 その4日後には3位で終えたプレミア最終節が残されてもいた。加えて、シーズン序盤には欧州スーパーカップ、半ばには日本でのクラブワールドカップをこなし、FAカップとリーグカップの双方で準決勝まで勝ち上がってもいた。

 故障者の数はEL決勝で4名が松葉杖をついて会場入りした今季ユナイテッドほどではなかったにしても、日程の過酷さでは当時のチェルシーが勝るとも劣らない。

 モウリーニョも、内心では今季が成功ではないと自覚しているに違いない。だからこそ、チームの不出来を様々な発言で覆い隠そうとした。

 BBCテレビで「5?7年がかりのプロジェクトになるかもしれない」と発言したのは4月。リーグ優勝を果たすことになるチェルシーと、得点数は最多で失点数は最少の2位となるトッテナムとの大きな差を既に認識していたということだ。

 EL優勝後の喜びも、“3冠”の成功を祝っているようでいて、実は欧州での決勝で負ければ失敗とみなされるプレッシャーからの解放と、CL出場権獲得で今夏の補強が行いやすくなったことへの納得を意味していると受け取れた。

 テレビカメラの前で、目の下にくまを作りながら「非常に良いシーズンだった」と、安堵の表情で語ったモウリーニョ。新体制下のユナイテッドは、晴れてCLをも戦う来季に、指揮官も本心で「成功」と言えるシーズンを目指す。

(取材・文:山中忍【イングランド】)

【了】

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