「ハーフではなくダブル」。日仏のアイデンティティを大事にする教育方針
サッカー一筋になった山口は小学校卒業と同時にFC東京U-15深川に入団し、その後FC東京U-18昇格を掴み取ったが、高校1年の夏に再び大きな決断を下す。
「日本でやっていた時に限界を感じました。フランス学校とサッカーを一緒にやっていて、時間的にも移動が毎日2、3時間くらいあって、それは無理だなと思って。勉強も全然進まなくなってしまったんです」
山口は両親の「ハーフではなくダブル。フランス人でもあり、日本人でもあるという2つのアイデンティティをポジティブに育てたい」という教育方針のもと、幼稚園の頃からフランス政府の支援によって設立された東京国際フランス学園に通っていた。
日本とフランスの文化や言語などを同時に学んでいくには時間が足りなすぎた。本人も勉強とサッカーの両立に限界を感じていた。そこでどちらも中途半端なままではいけないと家族で話し合い、模索したのが、父の母国フランスのクラブへの移籍である。
フランスの育成組織は学業にも力を入れており、父の地元ブルターニュ地方に本拠地があるロリアンは特にサッカーと学業の両立を大切にするクラブだった。寮と学校が同じ建物の中にあり、少人数で高いレベルの教育を受けることができる。さらに歩いてすぐのところにロッカールームや練習場があり、サッカーにも集中できる理想の環境だった。
母・浩美さんも「主人のフランスの文化も大事にしたいし、私たちの日本の文化も大事にしたいし、そういう意味で両方になるべく時間を割くためには、これが一番の選択肢だったのかなと思います」と、息子の決断を後押しする。