先発メンバー表に、ちょっとした“異変”が
勝利のために、チームから求められる役割を完遂したい。一方で日本に帰化するはるか前、ブラジル人のトゥーリオとして来日した千葉・渋谷幕張高校時代から積み重ねてきたスタイルに矜持も抱いている。
二律背反する思いが、田中マルクス闘莉王の胸中で幾度となくぶつかり合っていたのだろう。敵地・味の素スタジアムに乗り込んだ、21日の東京ヴェルディとのJ2第15節。京都サンガの先発メンバー表に、ちょっとした“異変”が発生していた。
右太ももの肉離れから復帰し、本来のセンターバックではなく最前線で起用された4月15日の愛媛FC戦。いきなりハットトリックを達成し、サンガを勝利に導いた闘莉王のポジションは、続く松本山雅FC戦から「DF」ではなく「FW」と記されてきた。
その間に3つのゴールを上積みして、チームも愛媛戦を境に3勝4分けと確実に勝ち点を獲得しながら迎えたヴェルディ戦。闘莉王のポジションは再び「DF」と表記されていた。
「登録のままでいこうと。いろいろと事情がありまして」
表記上ではディフェンダーが5人。実際にキックオフの笛が鳴り響くと、背番号4は前節までと同じく最前線に位置して、2試合の出場停止処分が明けたケヴィン・オリスとツートップを形成した。
布部陽功監督が苦笑いしながら「いろいろと事情が」と言及したのは、闘莉王のたっての希望があったからだ。試合後の取材エリアで、闘莉王もまた苦笑いしながら登録を再変更した理由に触れている。
「僕自身はフォワードだと思っていない。いまは前で使われているかもしれないけど、ずっとディフェンダーとしてプレーしてきたし、いまだに攻撃的なディフェンダーだと思っているので」
起用法に不満を抱いているわけではない。要はちょっとした心意気の問題。ピッチでは誰よりも熱く、激しく、そして劣勢を強いられたサンガを鼓舞する、頼れる背中を見せ続けた。
「本職のフォワードじゃない、というのは見ている誰もがわかると思うんですけど、それでもチームのために必死です。右足の状態がまだ100パーセントではない状態で連戦が続きましたけど、やらなければいけないことを、チームの一員としてこなしている。それだけです」