前線に欠けていた最後のピースとは
滑り込みでメンバー入りを果たした田川亨介【写真:舩木渉】
それでも内山監督は「前線に関しては、ちょっと違うタイプの選手がほしかった」と、田川を21人の本大会に向けた最終メンバーに含めた。スピードや高さといった身体能力を活かすタイプのストライカーがチームに欠けていた最後のピースだった。
南アフリカ戦を目前に控えた田川は、「できれば先発がもちろんいい」とは言うものの、自らの置かれた立場をよく理解しており、「どんな立場にたっても自分のプレーを出せるように準備していきたい。自分の役割を果たすために全力でやるだけ」と語る。
田川に与えられた「役割」とはズバリ、ゴールだ。
鳥栖でもベンチからの起用が多く、途中出場を苦にしない。「負けてる時とか、勢い欲しい時とか、流れしだいですけどチャンスはあると思うので、そこはいつでも狙っていきたい」と、がむしゃらにゴールへと向かっていく。
滑り込みでの招集だったため、まだチームメイトとの連携が上手くいかない場面もあるというが、それも合宿中のトレーニングで積極的に周りとコミュニケーションをとることで克服しつつある。自分の力を発揮するには「チームメイトの力が必要。そこが一番です」と、田川は力強く語る。
「自分がダイナミックな動きをすれば目に止まると思うので、その部分は忘れずにどんどん前向きなプレーをしていきたい」
こういった姿勢は仲間たちに勇気を与え、試合終盤の気持ちが切れがちなタイミングでチームにエネルギーを注入してくれるはず。久保、市丸、遠藤、田川といった1プレーで流れを変えられる“ジョーカー”の存在が必要なときは必ずやってくる。
(取材・文:舩木渉【水原】)
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