過去最高の連帯意識。出場機会少ない選手もチーム支える
ベンチが増えても腐らなかった昨季までの主力はウィリアンに限られない。セスク・ファブレガスも出番が来れば秀逸のチャンスメイクを繰り返した。敵地でマンチェスター・シティに逆転勝ちし(3-1)、優勝候補筆頭として名乗りを上げた14節での同点アシストが好例だ。
主将のジョン・テリーも、「チームが勝ち続けていることを意味するのだから、最後まで自分に出番が来ない方がいい」とまで言い、ロッカールームでのリーダーシップ発揮に努めてきた。
こうしたチーム優先の一体感を取り戻すことができた裏にもコンテがいる。プレシーズン開始を告げたクラブハウスでのバーベキューは、選手が喜ぶ家族同伴。チームを率いて西ロンドンのレストランに繰り出した指揮官は他にもいるが、コンテの場合は隔月ペースの定例。会食の場には、イタリア系だがオープンして間もない日本食レストランも含まれる。
地元紙にコメントしていたイタリア料理屋のシェフによれば、選手たちがプライベートで訪れた際に何を飲食したかを報告させている点も入念なコンテらしい。
スタッフが「連帯意識は過去最高」と評する指揮官は、「仲間」がチームの域を超えてもいる。クラブ一般職員のクリスマスパーティーに2時間近く出席したことは昨年末に報じられたが、500人規模の出席者に手書きのサイン入りカードを添えたワインとシャンパンを贈っていたことも明らかになった。
そのコンテには、祖国のインテルが年俸倍増を約束するラブコールを送っている。チェルシー経営陣は、他のプレミア大物監督よりも安い10億円弱の年俸アップと補強に関する発言権強化をオファーすることで、戦力的に満足してはいなかったチームで新システムを機能させ、地に落ちていた自信と低下していたムードを回復させた監督を引き留めるべきだ。「コンテを得た」からこそ、プレミア王者としての今季があるのだから。
(取材・文:山中忍【ロンドン】)
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