王座奪回の決め手を一言で言えば…
昨夏に「カンテを得たチームが優勝する」と占っていたのは、レスターのファンでもあるガリー・リネカー。実際、昨季王者のレスターからエンゴロ・カンテを獲得したチェルシーが今季プレミアリーグを制した。しかし、昨季10位による王座奪回の決め手を一言で言えば「カンテ」ではなく「コンテ」。新監督のアントニオ・コンテが大低迷後のチームを蘇えらせたのだ。
もちろん、カンテは期待に違わぬ新戦力だった。働きぶりはプロの同僚たちにも認められ、PFA(選手協会)の年間最優秀選手賞に輝いた。同じく今季最優秀と評価されたFWA(記者協会)の投票では、筆者もチェルシーの新ボランチに投票した1人だ。
だがコンテは、そのカンテしか意中の獲得候補を手にできなかった。自身には早期解任の噂も流れた。にもかかわらず、「10位だったのだから問題は多い」と認識していたチームを復活させた。昨年10月からの13連勝中には、メディアで「死角なし」と言われるまでに仕立て上げた。
優勝に至る過程で、コンテは2度の危機を二大采配で切り抜けてみせた。1度目は9月後半、リバプール戦(1-2)とアーセナル戦(0-3)で連敗した後の基本システム変更だ。
3-4-3採用を境に不可欠な戦力となったのは、いずれも昨夏の第1ターゲットではなかったダビド・ルイスとマルコス・アロンソ、そして戦力視さえ怪しかったビクター・モーゼスとペドロ・ロドリゲス。D・ルイスは3バック中央でリベロ的な素養が生かされ、ウィングバックのアロンソとモーゼス、同ポジションでも起用されたMFのペドロは、揃って攻守両面で持ち前のエネルギーをフル活用した。
更には、ウィングバックの存在でアウトサイドでの守備から解放されたエデン・アザールが、左サイドから好みの前線中央へと流れやすくなった。「自由をもらった」と表現していた10番と近い位置で絡めるようになり、CFのジエゴ・スタが孤立して苛立つ危険も激減した。両者は優勝決定の36節終了時点で合わせて35得点11アシスト。昨季の不振が全く嘘のようだ。