盟友が散らす崇高な火花。ともに世界の舞台へ
メンバー発表後に、原はリーグ戦とYBCルヴァンカップを1試合ずつ戦った。ともに黒星を喫し、その過程では三浦監督が成績不振の責任を取るかたちで休養。片渕浩一郎コーチが暫定的に指揮を執り、原が代表チームに合流した後に呂比須ワグナー新監督の就任が発表された。
「チームの雰囲気は正直、あまりよくないというか。個人的にはすごくいい経験をさせてもらっているし、それでもチームの結果が出ていないという点で、複雑な思いを抱かざるを得ませんでした。これからも厳しい戦いが続くと思いますけど、チームメイトを信じて、自分は責任をもってしっかりと戦ってきたい」
胸中に抱いていた不安をこう打ち明けたこともある原は、自らを抜擢してくれた三浦前監督への感謝の思いを力に変えながら、韓国の地で最終調整に臨んでいる。
一方の杉岡は、直前合宿前の最後の一戦となった7日のFC町田ゼルビア戦後に曹監督からカミナリを落とされた。両チームともに無得点で迎えた後半終了間際に、自陣で不必要なファウルを犯したためで、あらためて「考えてプレーすること」の大切さを意識のなかに刻んだ。
「代表に選ばれたときに、実は『帰ってきたときにポジションはないかも』とちょっと思いました。常日頃から争いがあるし、いつも危機感をもっていた。その意味でも、このチームを選んで本当によかったと思っています」
11日から静岡県内でスタートした直前合宿で顔を会わせるまで、2人は連絡を取り合っていない。「自分はあまりLINEとかが好きじゃなくて。返信するのが面倒くさいし」と原は苦笑いしたが、高校時代から同じことを考えてきたからこそ、あえてメッセージを交わしあう必要もないのだろう。
「アイツがいなかったら、多分、いまの僕もいない。高校時代から同じポジションでプレーしてきた仲間ですけど、いい意味で刺激しあえるライバル意識もお互いにもっているはずなので」
杉岡に抱いてきた、畏敬の念にも近い偽らざる思いを原が打ち明ければ、杉岡もU-20日本代表での日々再び同じ時間を共有できることを笑顔で歓迎した。
「原がいなかったら、僕もどこかで満足していたかもしれない。同じチームになって成長した部分をお互いに感じると思うので、刺激しあいながらまた切磋琢磨していければ」
世界へ羽ばたく若手の登竜門として長く位置づけされてきたU-20ワールドカップを皮切りに、主力を担う世代となる3年後の東京五輪、そして年齢制限のないA代表での戦いへ。「盟友」と書いて「ライバル」と読む間柄にある原と杉岡は、これからも崇高な火花を散らしていく。
(取材・文:藤江直人)
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