4年半前にはリーグ2に所属。レスター優勝に似た感触
「欧州五大リーグのひとつで優勝タイトルを勝ち取ったことは自分のキャリアでもっとも素晴らしい功績。PSGから王座を奪ったことも格別だ。非常に疲れたシーズンだったが、最後に最高のご褒美を手にすることができた」と感想を話したジャルディム監督の手腕もまた見事だった。
1、2点をとって地味に勝っていた昨季とはガラリと表情をかえ、多少守備で犠牲を払ってでも生きの良い若手にガンガン攻めさせる清々しい攻撃的サッカーを展開、それが選手たちの自信につながり、自分たちのスタイルを確立することにもなった。
2部から1部への昇格に貢献したクラウディオ・ラニエリを昇格1年後にスパッと切り、ほぼ無名だったジャルディムを連れてきたフロントの眼力に狂いはなかったということだ。
「4年半前にはリーグ2にいた…。しかしこのチームは特別だ。才能とエスプリに溢れている」と喜びを語ったモナコのアルベール王子の目には光るものが浮かんでいた。
今季大ブレイクし、一躍時の人となったムバッペは「PSGとニースを押さえ込んでチャンピオンになれた。最高の気分だ!」と喜びを語った。彼には移籍の噂が絶えないが、「おそらく残る」とバシリエフ副会長は話している。チームスピリッツが最高潮にあるこのチームで、来季チャンピオンズリーグに再挑戦するのは、彼にとってもきっと魅力的なはずだ。
モナコの本拠地、ルイ二世スタジアムのキャパシティは15000人と小さい。生粋のモナコ国民も3000人ほどしかいない。しかし、数は少なくても、モナコと、隣接するフランスの町にいる土着のサポーターたちの熱意は、決して小さくはない。
レンタルバックの中堅選手や生え抜きの若手を中心に作られたチームが、潤沢な予算でスター選手を集めたPSGに勝った。昨季のレスターシティの優勝の喜びにも似た感触が、フランスリーグを包んでいる。
(取材・文:小川由紀子)
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