絵に描いた餅に終わる可能性が極めて高いプラン
そして、最大の障壁となるのが、東アジア地域における政治的及び外交的な関係だ。安倍政権になってからの日本は、韓国及び中国と決して良好な状態にあるとは言えない。何よりも金正恩体制のもとで核実験やミサイル発射を繰り返す北朝鮮は、日本を含めた近隣諸国と常に緊張状態を作り出している。
韓国国内の報道によれば、鄭会長は4ヶ国による共催が実現すれば、東アジア地域の安定に寄与できると考えているという。要は「平和」の二文字を招致への大義名分とする思惑が伝わってくるが、目標の異なる各国、特に北朝鮮を話し合いのテーブルに就かせるのは荒唐無稽な話と言っていい。
2030年大会のワールドカップ開催国は、2026年大会のそれとセットで、2020年5月に決まる予定になっている。それまでに政治的及び外交的な緊張を取り除き、4ヶ国による共催で合意に至り、具体的な計画を練ったうえで立候補するには、3年という時間はあまりにも短すぎる。
ウルグアイとアルゼンチンの共催計画も、ウルグアイの民間人が最初に声をあげる形で20世紀の末から草の根的に進められ、10年前から両国サッカー協会が、6年前からは両国の政府が本格的に加わった。こうした差を見ても、鄭会長のプランは絵に描いた餅に終わる可能性が極めて高い。
(文:藤江直人)
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