最大の魅力は強心臓。ヤジを聞きに相手サポーターの近くへ
小川は現在、ルヴァンカップで4ゴールを記録し得点ランキングトップに立っている。第4節・柏レイソル戦では思うようなパフォーマンスを見せられなかったが、86分に逆転弾となるPKを決めた。チームは大会2連敗と苦しいスタートを切ったが、柏を下して2連勝とし、決勝トーナメント進出に望みを繋いだ。
19歳はペナルティスポットにボールを置くと、これをど真ん中に蹴り込んだ。迷いなど微塵もなかった。「プレッシャーは感じない方」と話したことがあるが、土壇場の状況でも気持ちが揺れ動かない。彼にはいくつかの武器があるが、それらを最大限まで高める強心臓こそ、小川が持つ最大の魅力ではないだろうか。
こんなエピソードがある。
この一戦の舞台は柏のホーム、日立柏サッカー場。ゴールデンウィークということもあって、10,357人が詰めかけた。このスタジアムは陸上トラックがないためスタンドとピッチの距離が非常に近く、臨場感という点で国内屈指。サポーターの声がダイレクトに選手の耳へ届く環境だ。ホームチームにとってはこれ以上ないほど力となる。当然のことだが、アウェイに乗り込んだ磐田の選手たちにとっては声援ばかりが聞こえるわけではなかった。
そうした環境の中、小川はあえてゴール脇に置かれた給水ボトルのところへ足を運び、喉を潤しながら“ヤジ”に耳を傾けたという。
「スタンドとの距離が近い方がより気持ちが入る。この前の柏戦はゴール横にある水を飲みに行った時にけっこうヤジられました(笑)。でも、それが嬉しいというか、『やってやろう』という気持ちになる。なので、わざと水を飲みに行ったりもしましたね」
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