古参選手たちが引き継いだ伝統
ただこのチームの強みは古参の選手たちを大切にし、彼らがクラブの伝統をちゃんと引き継いだという点にもある。これが、再生に至った第3の理由である。
セリエB降格時代を戦ったジョルジョ・キエッリーニやクラウディオ・マルキージオは、今日もチームの屋台骨を支えている。そして前キャプテンのアレッサンドロ・デル・ピエロ、そして現キャプテンのジャンルイジ・ブッフォンは、B時代やその後の低迷期にもクラブを去らず、ユーベの選手には何が必要なのかを仲間に伝え続けた。
9日の準決勝モナコ戦2stレグの後半、ゲームを流しに入ったユーベはショートコーナーからキリアン・ムバッペにゴールを許した。その直後ブッフォンは怒りを露わにし、勢いも激しくチームメイトを叱咤していた。その後確かにチームは引き締まり、堅実に試合をまとめている。仕方ないと済ませがちなところでも、厳しく集中を求める。最終ラインのみならず、全選手に徹底された守備意識は、こうして育てられているのだ。
『フィーノ・アッラ・フィーネ(最後の最後まで)』。このクラブがスローガンとしていた言葉は今も選手たちが口にする。近代的なスタジアムを造り、経営を抜本的に変える一方、クラブとしてのアイデンティティーは大切にしたからこそ、この実直な復活劇は成し遂げられた。
「優勝を狙うに機は熟したと思う」。モナコ戦後にボヌッチは言った。カーディフで結果を出せるか。
(取材・文:神尾光臣)
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