「信じる」力及ばず。巨大な喪失感は残ったが…
さらに3ゴールが必要でも「信じる」ことをやめないアトレティコは、57分に2枚替えで流れを変えようとする。F・トーレスとヒメネスを下げてケビン・ガメイロとトーマス・パーテイを投入。それぞれ元のポジションに新たな血を入れた。
66分にはガメイロが絶好機を迎える。自陣からのカウンターでヤニック・カラスコが抜け出してシュートまで持ち込む。GKが弾いたボールをガメイロが頭で押し込もうとするが、ヘディングシュートをナバスの正面に飛ばしてしまい、大チャンスを逃した。
71分、ガビのロングボールを受けたグリーズマンが強引にシュートまで持ち込むが、これもGKナバスにセーブされてしまう。77分に再びガメイロに押し込むだけの決定機が訪れるも、一歩手前で相手DFに触られてしまった。
苦しい展開ながらいくつもチャンスを作り、守備もGKオブラクを中心に奮闘したアトレティコだったが、「信じる」力が及ばなかったか。マドリーの前に2戦合計スコア2-4で屈した。
今季で見納めとなる本拠地ビセンテ・カルデロンで最後のCLの試合、そしてマドリード・ダービーという最高の舞台だった。1試合の結果だけ見れば2-1で勝利だが、試合に勝って勝負に負けた、アトレティコにとってこれほど悔しい“勝利”はないだろう。
序盤の2ゴールで希望が見えたことによって、あの獣のような異様な勢いがなくなってしまった。選手たちの頭の中に“creer”という言葉はクリアに写っていたのだろうが、1失点して歯車が完全に狂ってしまったようだった。
アトレティコにとって、マドリーとは今季4度目の対戦で、この2ヶ月で3度激突している。これまでは0-3、1-1、0-3と全く勝てていなかった。それだけに”信念”の力で2-1という結果をもぎとったと考えればポジティブになれるかもしれない。ただそれ以上に”信念”を打ち砕かれたあの1点が、ビセンテ・カルデロンに計り知れない落胆と想像を絶する喪失感をもたらした。
ただ、ここで折れて立ち止まってしまわないのがアトレティコであり、今こそ「信じる」力が試される時。何度でも立ち上がり、這い上がり、食らいつく。それがシメオネの掲げる“creer”の精神だ。
(文:舩木渉)
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