「細貝が来てよかったね」と早く言ってもらえるように
自ら選んだ背番号の「37番」には、実はちょっとした想いが込められている。十の位の「3」はレッズ時代の2年目からヨーロッパへ旅立つまで背負い続けたものであり、一の位の「7」はアウグスブルク、ヘルタ・ベルリン、そしてシュトゥットガルトで託されたものだ。
つまりは日本とドイツで積み重ねてきた濃密な経験の軌跡を、新天地レイソルに還元したいという決意と覚悟の象徴といっていい。
「チーム全体が若がっているレイソルに、31歳になる自分が入ったことで『なぜだ』と思われたかもしれない。僕自身、先ほども言ったようにレイソルのファンだったし、そのレイソルに必要とされたし、最初は特に周りから気を使われる状況で、それでもレイソルでプレーすることで僕自身、人間としても成長できると思ったんで。自分にはそういう役割もあるんだと言い聞かせながら、毎日をすごしています」
ここで細貝が言及した「そういう役割」とは、要は経験を伝授することだが、もちろん伝道師だけで終わるつもりもない。ベテランの大谷や栗澤僚一、若手の小林祐介、手塚康平、安西海斗らがひしめくボランチ争いに割り込み、自分の色を加えていくことが、チーム全体を活性化させていくと信じている。
「まだそれほど試合に出ていないので、サポーターの方々からは『細貝って誰』と思われるかもしれない。僕が移籍してきたことでレイソルがよくなって、みんなから『細貝が来てよかったね』と早く言ってもらえるように、これからもっと、もっとやっていかないといけないですね」
J1の舞台に限れば、出場した5試合の勝率は100パーセント。サッカー版「勝利の方程式」を託されながら、現状に満足することなくさらに高いステージをも目指す。7シーズンぶりとなるJリーグの舞台で、細貝は少しずつ存在感と充実感とを増幅させている。
(取材・文:藤江直人)
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