自ら獲得したフリーキックは「ボール2個分くらいズレちゃった」
84分に象徴的なシーンがあった。ピッチ中央付近で後ろ向きにボールを受けた久保は、1タッチ目で反転してドリブルで一気にゴールへ向かう。結果的にペナルティエリア手前でファウルによって止められたが、その際に倒れながらシュートまで打って見せた。
「あそこで仕掛けなかったらFWじゃないと思っていて、(相手が)来てるのは見えていて、『あ、倒れるな』っていうのは感じたんですけど、どうせ倒れるんだったらシュート打っとこうと思って、シュートを打ったら、ファウルもらえてよかったです」
ファウルで止めた前寛之が久保の体に手をかけ始めてから、シュートを打ち終わるまで1〜2秒ほど。その短い時間の中でシュートの判断を下し、しっかりと枠の中に飛ばす技術は特筆すべきものだろう。ドリブルのコース取りやターンの鋭さにも一切無駄がなかった。
このプレーで得たフリーキックは、東慶悟や高萩から譲ってもらい、久保自ら蹴った。「ニア上を狙えたらいいなって感じで、ちょっとボール2個分くらいズレちゃったんで、残念です」と振り返ったが、左足のキック精度がJリーグトップクラスの選手たちも認めるレベルにあることを示した場面だった。
対戦した札幌の小野が「あそこで蹴らせてもらえるくらい(周りの選手たちから)信頼されていると思うので、そういった意味ではFC東京の選手たちも彼に対してリスペクトをしているんじゃないか」と分析していた通りだった。
久保の変幻自在な動きに対し、パスの受け手と出し手の関係を築けていた数少ない選手であるウタカはこんなことも言っていた。
「久保の将来は明るいと思う。だけど才能はハードワークや献身、謙虚さといったものがなければ成立しない。彼に才能があるのは間違いないから、規律を守り、一生懸命に練習していけば本当に素晴らしい選手になるはず。特に個人スキルはとてもいいものを持っている。チームのためにプレーでき、ラストパスも出せて、フリーキックも上手い。非常に高いクオリティを備えている」