ウタカが絶賛する質の高さ。卓越したオフ・ザ・ボールの動き
結果的に久保の何気ない動きが味方のプレーの選択肢を増やし、攻撃を加速させる効果もたらす。一つひとつの身のこなしがなめらかで無駄がなく、美しい。小さなイニエスタを見ているようだった。オフ・ザ・ボールの動きは「ボールが欲しかった」久保自身が意識的に取り組んでいたプレーでもあった。
味方が前を向いた瞬間にマークを外して次のプレーにつなげる準備をする、とは言葉で簡単に表現できても、ピッチ上で体現するのは一朝一夕にできるものではない。数多くの実戦経験を積んで、試行錯誤の上に身につく特別なスキルだ。久保はそれを15歳にして高いレベルで体得している稀有な選手だった。
おそらくオフ・ザ・ボールの動き出しや質はJ1でも屈指のレベルにある。久保のプレーにタイミングを合わせられていたFC東京の選手は、高萩洋次郎とピーター・ウタカの2人だけだった。15歳の少年はまだトップチームに合流したばかりの状態で、周りとの連携はできあがっていない。他の選手も久保の特徴を理解してくれば自然とテンポが合ってくるはずだ。
前線でコンビを組んだウタカは久保について「素晴らしいクオリティを持っているし、ボールを失わないからパスを出すのにためらいはなかった」と話していた。昨年のJ1得点王も認めるボールスキルもやはり高いレベルにある。
久保は試合後、「今日は相手が疲れていて、そこまでマークとかも全然しつこくなかったので、左だけでいけちゃったって感じですね。そこで左に来られた時に難しくなるんじゃないか」と語っていた。利き足でない右足も練習中のようだが、左足のスキルはJ1の舞台でも十分に通用するものを持っている。