「そのままやっていけばすごい選手になる」(小野伸二)
北海道コンサドーレ札幌に所属する小野伸二は、15歳でJ1公式戦デビューを飾った久保建英と自身の同時期を「全然比べ物にならないくらい」と評した。
かつて13歳でU-16日本代表に招集され、18歳でA代表デビューを飾るなど「天才」と呼ばれてきた男の言葉には重みがある。「そのままやっていけばきっとすごい選手になるだろうし、怪我だけ気をつければいいんじゃないか」という指摘も含めて。
1万9123人の観客が詰めかけた3日のYBCルヴァン杯グループA第4節、FC東京対北海道コンサドーレ札幌の試合で、最も大きな注目を集めたのは15歳の久保建英。「元バルセロナ」という肩書きを持つ高校1年生の途中出場に会場が沸いた。
小柄な体と左利きであることから「日本のメッシ」と呼ばれることもある久保だが、そのプレーを見れば一瞬で「メッシ」ではないことがわかる。それでも確実に“バルサのDNA”が体に染みついていることは容易に想像できる。
彼のプレーを見るのは初めてではない。だが、これまで以上に周りのレベルが高い環境における久保の振る舞いを目の当たりにした時、1人の選手が頭に浮かんだ。それはアンドレス・イニエスタだった。
彼こそリオネル・メッシ以上に“バルサのDNA”を受け継ぐ名手であり、クラブの象徴的存在。久保の背中からは、バルサの背番号8が透けて見えるようだった。
その理由として一つ明確なのは、ボールを持っていない時のプレーが日本サッカーのレベルを超越しているということだ。いわゆる「オフ・ザ・ボールの動き」というもので、長年日本サッカー界の課題とされてきたプレーでもある。
久保は味方がボールを持った時、その動きに合わせて数秒に一度のペースで細かく動きを修正する。必ず自分がいい形でパスを受けて前を向けるように相手のマークが及ばないスペースへ入ったり、動きのテンポを変えてスッと相手の背後に回ったり、あるいは他の選手が最高の体勢でプレーできるようマークを引き連れて囮になったり…動き方のパターンは無数にあり、これを瞬時に判断して何度も繰り返す。ほんの数歩、あるいは体の向きを変えるだけというものもある。