シメオネが到達した解決策。ジダンの回答
アトレティコ・マドリーは堅守速攻で最高峰のチームといっていいだろう。レアルやバルセロナに勝つためのチームともいえる。
ところが過去2度のCL決勝ではレアルに矛盾交換のマイナス勝負に持ち込まれ、磨き上げた堅守速攻を発揮できなかった。アトレティコにとって、自分たちがボールを持ったときに何ができるかが宿題となったわけだ。ディエゴ・シメオネ監督は試行錯誤の末、持ち味の守備の強度を落とさずに攻撃する方法を見出した。
右か左、どちらかにボールが行ったらそのまま攻めきる。サイドチェンジは使わない。サイドにはSB、MF、FWが入れ替わりながら進出し、ワンタッチパスやフリックを使って執拗に攻める。アルゼンチンの先輩監督であるマルセロ・ビエルサ方式だ。狭くなるので攻めにくいかわりに、狭いから直ちにプレスが効く。ボールを持たされても守備の強度を落とすことなくアトレティコらしく攻撃ができる。
後半途中からはアトレティコのリズムも出てきた。しかしレアルはすでに対策を持っていたようだ。
ときにはMF4人を全員サイドに集結させて守っている。仮にベイルが健在でBBCを起用していたら、おそらくこうはできなかった。ロナウドとベイルにサイドを守らせていたら確実に穴が開いていたはずだ。
アトレティコのサイドアタックに対して、レアルはまずSBとMFで防御ラインを形成する。MFのラインは右からモドリッチ、カゼミーロ、クロースの3人だが、トップ下のイスコがどこかの間へ引いてくる。SB+4人のMFの誰かで防御ラインを作り、さらに他の3人もボールサイドへ寄せて分厚い壁を築いた。
負傷交代のカルバハルの穴を完璧に埋めたナチョ、本来の左サイドで存在感を示したアセンシオ、右サイドを固める4-1-4-1対応でいつもどおり堅実なルーカス・バスケス。レアルの交代選手の質の高さ、層の厚さも印象的だった。
(文:西部謙司)
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