顔を隠した水原サポーターの恐怖。暴力沙汰にはならず
水原サポーターは最初の5、6人から、最終的には10人ほどになっていたという。皆一様にニットマフラーなどで顔を隠し、フードをかぶって、サングラスをかけて、素顔がわからないような形でフロンターレサポーターの席へ乗り込んできたそうだ。
本来、ACLの試合ではアウェイサポーターはホーム側スタンドから完全に隔離されているはずである。日本ではスタジアムのレイアウトもACL用に変更され、境界には警備員が配置されて一般のサポーターがお互いのエリアを行き来できないようになっている。
だが、A氏は「警備員は少なかった」と語る。「後からクラブ関係者に聞いた話」と前置きしながら、「警備員も水原サポーターを止めには入ったんだけれど、来た人数があまりにも多くて対応しきれなかったということでした」と、相手サポーター乱入の原因を指摘した。
「警備員はピッチからスタンドを見ている人や、スタンドのサイドにはいたんです。でも、もみ合い寸前になるくらいまで動かず、最初はチケットチェックのスタッフしか止めに入っていない感じで。最終的にやばいと思ったのか駆けつけてきましたが…」
試合に勝って、いい気分で帰ろうとしていた最中の出来事だけに水原サポーター乱入による恐怖と衝撃は大きかったはず。その場にフロンターレサポーターが5、60人いたとはいえ、全員がいわゆる「コアサポーター」というわけではない。
A氏は語る。
「水原サポーターは普通に座っているサポーターをよけるようなことをせず、スタンドの階段ではなく座席の上をかき分けるような形で降りてきていました。自分は前の方にいたので大丈夫でしたが、上の方に座っていたサポーターはすごく怖かったと思います。意味のわからない言葉を叫びながら降りてくるわけですから」
それでもフロンターレサポーターは冷静だった。
「向こうは周りを押しのけて突進してくるので、もみ合いみたいにはなっていましたが、川崎のサポーターはコールリーダーを中心に『絶対に手を出すのはやめよう』と声を掛け合っていたので、手は出していないです。危ないからとみんなで前の方に固まっていました」