結果が出ない日々。工藤は壮絶なプレッシャーと戦う
90分間で残した自身の数字が、チームの勝敗に直結する。誰が見ても単純明快でわかりやすく、ゆえに計り知れないほど大きな責任を背負う。サンフレッチェ広島のエースストライカー、工藤壮人は相手ディフェンダーやゴールキーパーだけでなく、壮絶なプレッシャーとも戦っている。
9節を終えた段階で、サンフレッチェは1勝しか挙げていない。4月7日のガンバ大阪戦でもぎ取った現時点で唯一の白星は、後半7分に工藤が決めた値千金の一撃を死守したものだった。ドローで勝ち点1を獲得したアルビレックス新潟との開幕戦と、ベガルタ仙台との前節でも工藤はゴールを決めている。
翻って、ノーゴールに終わった6試合はすべて黒星を喫している。しかも、そのうち5つが完封負け。2年前のJ1王者が勝ち点5の16位に低迷し、最下位の大宮アルディージャにも勝ち点で1差に肉迫されているまさかの現実を、今シーズンから広島に加入した26歳は真正面から受け止めた。
「前回の仙台戦よりは、チャンスの数で言えば少なかったと思う。そのなかでも後半には、自分のところでチャンスを作り出したのに決め切れなかった。チームとしても正直、セットプレーで失点した場面しか相手にやられていない、という感触もあるので」
FC東京のホーム・味の素スタジアムに乗り込んだ4月30日のJ1第9節。後半23分に与えた左コーナーキックから、こぼれ球をDF丸山祐市に押し込まれて喫した失点を最後まで挽回できない。0‐1のままタイムアップを迎えた試合後の取材エリアで、工藤は神妙な表情を浮かべた。
工藤の言葉通りに、その右足が均衡を破る千載一遇のチャンスがあった。後半11分。高い位置でセカンドボールを拾ったDF塩谷司が、敵陣へ猛然と迫る。ペナルティーエリア内で丸山とDF太田宏介にはさまれながら、工藤はその脳裏にシュートに至る絵を鮮明に描いていた。
「イメージはできていました。ペナルティエリアの中での駆け引きは、僕自身のストロングポイントでもあるので。ただ、そこで最後に決め切るところでのクオリティというものを、もっと上げていかないといけない」