警戒される左足。バリエーションを広げる試み
久保の最大の見せ場だったのは、後半27分の決定機。左サイドバック・小川諒也のパスを途中出場の高校生・原大智が落とした瞬間、前向きにボールを受けた久保は一気に前進。ペナルティやや外側の位置からまたも右足で思い切ったシュートを放ったのだ。これは相手守護神・阿部伸行の正面に飛び、ゴールには至らなかったが、「右でも十分勝負できる」というところを強く印象付けた。
「あそこで右足で1回決めておかないと。『右はないぞ』と思われたらおしまいなんで、早く右で決められるように練習したいと思ってます。相手も自分の左を狙ってきていたし、その分、右が空いてくるんで、『右もあるぞ』というのは見せたいと思います」と15歳の点取り屋はプレーのバリエーションを広げようと今、躍起になっている。
こうした駆け引き、相手の裏をかくことの重要性はバルセロナ時代から叩き込んできたことなのだろう。それを公式戦、しかもJ3優勝候補の長野相手に具現化できるのが、この選手の非凡さだ。
後半32分に登場して9ヶ月ぶりの公式戦復帰を果たし、久保と初共演した米本拓司も「化け物ちゃ化け物(笑)。自分が高校1年の時にこのレベルの試合に出るのは考えられなかった。ホントに適応能力の高さ、スピードに慣れる速さもすごいし、今のJ3の軸と言っても過言ではない。ボールを持った時のワクワク感もありますね」と驚きを覚えたという。
終盤は長野に押し込まれ、シュート数も倍の10本を打たれたFC東京U-23だったが、最終的に0-0のドロー。アウェイでの勝ち点1は最低限の結果だったと言える。
「試合展開的には押されてた時もあったし、押してた時もあって、どっちに転んでもおかしくなかった。転ぶんだったらこっちに転んでほしかったなという試合だったんで、ちょっと悔しかったです」と15歳の点取り屋は勝ち点3を手にできなかったことに不完全燃焼感を吐露した。そんな中でも、この半年間の確かな成長は実感した様子だった。