中山、高原、前田。ジュビロ磐田、ストライカーの系譜
元々、小川は強い信念を持つ選手だ。
「不甲斐ない」、「情けない」。そんな言葉を聞いたのは一度や二度ではない。結果の出ない日々に焦りを抱き、自分自身の不出来に苛立った。自信がなければそんな感情にはならないだろう。
今シーズンも春先はメンバー外が続いたが、第4節・ヴィッセル神戸戦でベンチ入りし、1点ビハインドで迎えた61分からピッチに送り出されている。
3月に始まったルヴァンカップではスタメン出場を続け、FC東京戦で爆発した。ここまで来るのに時間はかかったかもしれない。しかし、経験したもの全てを糧にし、成長した姿を内外に示した。
「去年や今年の最初の方で試合に絡めなかったけど、そこで腐らなかったからFC東京戦みたいな結果に繋がったと思う。腐らずにシュート練習とかやり続けたことが自分の中で大きかった。精神的にも成長できたかなと。メンバーには入れなかった時期は落ち込むというか、悔しい気持ちがあった。でも、下を向かずにやってきて良かった」
ジュビロ磐田には、ストライカーの系譜が受け継がれている。中山雅史(アスルクラロ沼津)、高原直泰(沖縄SV)、前田遼一(FC東京)という日本を代表するゴールゲッターがチームを支えた。いずれもJ1得点王の称号を持ち、国際舞台でも活躍した。現役時代、彼らの得点の数々を演出した名波監督は、点取り屋が“本物”になる過程を間近で見てきた。
例えば前田がプロ初得点を決めた試合の後、名波監督らチームメイトは「あれで良しとするな」と釘を刺したという。その叱咤の本質は、前田への期待感だろう。
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