トゥヘルの奇策、アンチェロッティの無策。香川は勝利を信じ…
トゥヘルは「我々は少し自分たちの道を見失った」と振り返る。41分には、リベリーの左からの折り返しを、フンメルスがダイレクトで押し込んで勝ち越しに成功する。バイエルンが示す王のプライド。フンメルスにしても、ここで負けては、昨年ドルトムントを去って移籍して来た意味がないのだ。
しかし、この日のバイエルンに、個々の選手が持つ意地以上の何かは見当たらなかった。カルロ・アンチェロッティ監督に、トゥヘルの奇襲のようなプランはなかった。チャンピオンズリーグで敗退し、絶対的守護神のマヌエル・ノイアーを欠いても、テコ入れはなかった。
香川が「モチベーション的な感じは、彼らも疲れているような雰囲気はありました」と感じたように、イタリア人指揮官は、今はモチベーターとしても機能していない。
対照的にトゥヘルは後半、ゴンサロ・カストロに代えてエリック・ドゥルムを投入。4バックから3バックに変更する。逆転を許してなお、再びバイエルンに反抗を開始した。
後半に光ったのは、右のインサイドハーフ気味に入ったデンベレ。69分にエリア内で右からクロスをファーに送り、オーバメヤンが頭で合わせて再び同点。さらに74分には、カウンターからロイスが再びエリア内の右のデンベレにパス。デンベレはキックフェイントでアラバを交わすと、左足で鮮やかなシュートを放った。ドルトムントが勝ち越しに成功する。ポカール決勝の進出を決めた。
出番はなかったものの、香川はこう振り返った。
「みんなが最後まで諦めずに、内容どうこうではなくて、本当に、最後、みんなが気持ちで信じたからこそ生まれたゴールだと思うので、本当に良かったです」
アンチェロッティの無策を背景に、トゥヘルの奇策が王者を崩壊に追い込んだ、ポカール準決勝だった。
(取材・文:本田千尋【ミュンヘン】)
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