ドルトムント勝利の鍵は“アイデンティティ”を貫くこと
ドルトムントとすれば、このような王者が負った“CLのダメージ”を突きたいところだ。ピエール=エメリク・オーバメヤンを先鋒として、前線から積極的にプレスを仕掛けていきたい。準決勝ではマインツ戦で温存されたジェローム・ボアテングとハビ・マルティネスが出場可能とのことである。バイエルンのディフェンスラインのビルドアップに関しては、マインツ戦よりも上向くだろう。
それでもドルトムントに連動したプレスを仕掛けられ、GKに逃げるか逃げないかを選択する際に、DF陣のちょっとした躊躇が思わぬミスを招く可能性はある。ドルトムントとすれば、持ち前の“ゲーゲンプレッシング”で試合のリズムを掴み、ミスを誘発したいところだ。
また、ドルトムントもボルシアMG戦で、今季3度目のバイエルン戦に向けて主力の温存を図っている。香川真司とユリアン・ヴァイグルに出場機会は訪れなかった。DFBポカールに向けて温存なのかどうか、トゥヘルから「そういう説明はないです」と、試合後に香川は振り返っている。
しかし香川とヴァイグルの“同時温存”は、CL準々決勝1stレグを控えた今月8日のバイエルン戦でも見られた措置だ。同様に今回の「最も大きなハードル」向けて大事をとったと見て差し支えないだろう。
よって香川は今季最後の大一番で先発なのではないだろうか。まずはしっかりとした守備から、“8番”として中盤を牽引したいところだ。そして機を見てゴール前に飛び込んでいけば、必然的にチャンスは訪れるだろう。マインツ戦でウルライヒは不安定な姿を示して、バイエルンは試合開始早々に失点した。3分のボージャン・クルキッチの先制弾に至る一連のプレーは、どこか“香川らしさ”に重なる。
敵の傷に塩を塗る、ではないが、チームも香川も王者に向かって果敢にアイデンティティを貫いていきたいところだ。
(取材・文:本田千尋【ドルトムント】)
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