取り戻したサッカーを楽しむ感覚。プロならではの難しさ
――丹羽選手は31歳。脂がのりにのって、熟成に近づきそうな頃合いです。
「近頃ね、ちょっと面白い感覚が戻ってきたんですよ。子ども時代、遊びのサッカーから始まり、プロになってサッカーが仕事になった。大好きな気持ちは変わらず持ち続けつつも、職業がサッカー選手に。それがプロでさまざまな経験をして、仕事ではあるんですが、遊びの感覚でサッカーができるようになってきた」
――いい意味で余裕が出てきた。
「余裕ではなく、純粋にサッカーを楽しむ感覚。遊んでいるときは何も気にしないじゃないですか。ボールを蹴りたいから蹴る。ゴールを決めたいからシュートを打つ。勝ちたいから走る」
――本能だ。
「プロになってからはいろいろと気にして、本質的な部分を忘れかけてた。試合に出ないといけない。勝たないといけない。レギュラーの座を奪われるとクビになる。それらが頭から消えて、純粋にサッカーができる喜びに再び気づいた」
――いいですね、それ。
「その感覚を取り戻して、ボンと一段上がった気がします。若い選手、これからプロを目指す選手にも気づいてほしいなあ。みんな最初は持っているんですよ。でも、いつの間にか抜け落ちてしまう。1年でも長くプレーしたい、代表に入って自分の価値を上げたい、年俸を上げたいとか考えるようになって。
そういった思いを取っ払ったとき、本来の自分のプレーができる。ああ、おれってこんな選手やったな。こういう楽しみ方を知ってたな。子どもの頃の感覚が甦ってくる。だから、ここ数年の僕は心の底からサッカーを楽しめてなかったんですね。いまは心躍るような気持ちでサッカーができています。どうしようもなく踊っちゃってるんですよ」
――今後の丹羽選手のプレーが楽しみです。
「とにかく、いい調子。今年もいろんなことあるだろうけど、この感覚さえあればどんなことが起きても大丈夫だと思います」
(取材・文:海江田哲朗)
【了】