「疲れるというのは誰が決めたのか」
――何をいまさらなんですが、このシリーズのテーマは選手のキャリアにおけるターニングポイントなんです。
「毎年、毎月、毎日がターニングポイント。今日だってそうかもしれない。この出会いが成長するきっかけになりえる。僕の描いた絵を見て、とある画家の方が『このサッカー選手はヤバい。おれが絵を教えてあげなければ』と話が来ないとも限らない。何があるかわからんのが人生です」
――あの、疲れないですか? その生き方。
「疲れないですよ。昨シーズンも120分ゲームをやりましたが、全然疲れてない。疲れるというのは誰が決めたのか。そういう話です」
――えっ、どういう話?
「先ほど、おっしゃいましたよね。日々、考えることだらけで疲れないんですか? と。人間は、死ぬまでに脳みそを全部使いきることができないと言われているんですよ。まだ余裕があるのに、僕の脳みそが疲れるわけがない。もっともっと使ってあげなあかん。
これだけ考えたら疲れる。90分走り続けたら疲れるとかって、ほかの人たちが勝手に言っていることであって、自分が感じないならそれでいい。僕は90分プレーしても全然疲れてない。連戦も平気です。中2、3日の7連戦でも疲れなんてない」
――今日は身体が重いな、キレがいまいちだと感じることは?
「ありますね」
――あるんかいな。
「それは受け入れます。今日はコンディションが良くない。素直に認める。反発しない。理解したうえで、自分にできる最高のプレーをする。ただし、90分終わったあとの疲労感はまったくない。疲労を回復させるための睡眠時間だってね」
――はい。
「適正睡眠時間ってあるやないですか。7、8時間とか。あれはそう言われるから、思い込んでいるだけ。人によっては2時間かもしれない。人間はそういう生き物です」
――ついつい既成概念に囚われる。
「本来は自分の経験をもとに、生きるべきです」
――ということは、丹羽選手は睡眠時間を決めていない。
「眠くなったら寝て、起きたいときに起きる。それが僕の適正睡眠時間。試合の日、就寝が遅くなって、4時間しか寝られないとします。そこで、4時間しか寝られないと思うのか、4時間も寝られると思うのか」
――心持ち次第だと。
「そのとおり。そもそも、僕はこれが厄介だと思ってるんですよ」
――スマホ。
「いいようで悪い。さとり世代と言われる若者たちは、みんな持ってますよね。僕は断じて否定したい。おまえら、何をさとってんねんと。何も経験してないのに。これなんですよ。これがあるからさとる。なんでも調べられ、経験した錯覚を覚える。実際は経験の裏付けがないペラペラの知識」