12年刻みの記念ゴール。30000点は再び12年後?
逆転したホームの川崎。ここからは試合が動かなそうだったので、そのまま清水の攻撃側にステイし、清水の新外国人チアゴ・アウベスの登場を待った。ハイライトだけだが清水の試合で彼を見て久しぶりに面白い選手が出てきたと思っていたので、撮影するのを楽しみにしていたのに、小林伸二監督はビハインドになってもなかなか起用してくれなかった。出場したのは79分から。20000ゴール男・金子との交代となった。1プレー、2プレーでその素質はわかった。予想を超えるテクニシャンだ。
「もっと早く使えよ、遅いよ」と思いつつチアゴ・アウベスを撮影。アディショナルタイムは「4分」。清水は鄭大世とミッチェル・デュークを狙って、ゴール前にボールを放り込む時間帯に。
中盤でボールを持った白崎凌兵が右サイドのチアゴ・アウベスに展開。私はクロスボールが入ると思って、ゴール前の鄭大世にピントを合わせる。しかしボールが来ないため、チアゴ・アウベスを確認すると、ゴール前には放り込まずに、自らドリブルでカットイン。私が気づいたのは、チアゴ・アウベスが左足を振り抜いた時だった。ゴールをしたのを目で確認する前に、スタンドの歓声で、劇的なゴールとなったことが分かった。そのままレンズ越しにチアゴ・アウベスを追い続け、この試合一番いい写真を抑えることができた。
同点ゴールを奪った清水エスパルスのチアゴ・アウベス【写真:松岡健三郎】
狙い通りいかないのがサッカーで、狙い通り撮れないのもサッカー。90分間ほぼ思い通りの写真が撮れなかったが、ポジションを変えなかったことで、アディショナルタイムに、狙っていなかった写真が撮れた。
最後に結果を残したものがスターになれるのがスポーツの世界。カメラマンも90分間、集中を切らさずに、あきらめないで狙い続ける必要があることを再確認した。
Jリーグ開幕の1ゴール目から12年で10000ゴール。そこからさらに12年後に20000ゴール。記念ゴールすべてが酉年に生まれた。私も酉年・年男だけに、さらに12年後。試合勘を研ぎ澄まして、30000ゴールを収められるようにしたい。
(写真・文:松岡健三郎)
【了】