「あの年齢のときの今野(泰幸)や永木(亮太)よりも上だと思う」(曹監督)
選手たちの成長を願う思いが、当初は予定すらしていなかったピッチ上でのミーティングに曹監督を駆り立てた。個人戦術を徹底した裏に込められた狙いを、ベルマーレを率いて6年目になる指揮官は「全員がピッチの上ではフラットに話さなきゃいけないので」とこう明かす。
「10代の選手が3人もピッチに立つチームは、いまのJリーグにはあまりない。そういう若手たちに遠慮してもいけないし、逆に高圧的になりすぎてもいけないところで言うと、今日の後半のあのバタバタした時間帯は(菊地)俊介と(秋元)陽太が中心になって、チームを落ち着かせなきゃいけない。
そうじゃなければ僕が(若手を)使わなきゃいいだけの話になってしまうけど、それは違うと思うので。何歳だろうが能力のある選手はピッチに立たせるべきだし、逆にツボ(坪井慶介)やシマ(島村毅)たちが頑張っているから彼らも頑張れる、それがチームだと思っているので」
37歳のDF坪井慶介、31歳のDF島村毅、さらには34歳のFW藤田祥史。ポジションこそ違うが、ベテランも中堅も若手も横一線になって日々競争を繰り広げた結果として、ベンチに入る18人が決まる。FC岐阜戦では19歳のMF神谷優太を含めて、10代の選手が4人もベンチ入りした。
そのなかで石原はプロ2戦目にして、初アシストを決めた。それでも直前に犯した二重のミスと、さらにもうひとつの心残りがあって、試合後にほとんど笑顔を浮かべなかった。
「僕が入ったときに3バックに戻したんですけど、僕が上手く(ピッチの選手たちに)伝えられなかった。チームもなかなか攻撃にいけなかった部分があって」
何も一人ですべてを背負う必要はない。ネガティブな思いが齊藤や杉岡にも伝播し、若さゆえの思い切りがなくなり、試合に出ることに対して委縮してしまう悪循環に陥る事態だけは避けなければいけない。あえて6人を指名した緊急ミーティングに込められた、本当の意味での狙いがここにある。
曹監督はそれだけ、10代の選手たちに期待している。3度目のフル出場を果たした齊藤には「アイツのボールを奪う本当に力はすごい」と称賛する。
「J1でも上のほうのレベルにいる。あの年齢のときの今野(泰幸)や永木(亮太)よりも上だと思う」
昨年5月に飛び級で湘南ベルマーレユースから昇格した齊藤も、165センチ、61キロの体に搭載された無尽蔵のスタミナとインテンシティーの強さに絶対の自信をもつ。ボールを前に運ぶ力も然り。ただ、アタッキングサードでのアイデアが足りないと、課題も自覚している。