試合後にピッチ上で行われた「夜空ミーティング」
試合後にミーティングを開催するチームは珍しくない。それでもロッカールームではなくピッチの上で、選手たちを座らせた状況で話し合いの場をもったのは、湘南ベルマーレが初めてではないだろうか。
ホームのShonan BMWスタジアム平塚にFC岐阜を迎えた15日のJ2第8節。先制しながら後半に入って逆転され、DF岡本拓也の鮮やかなミドルシュートで追いつくもPKで勝ち越され、直後にFWジネイがヘディング弾を決めて引き分けた直後だった。
公式会見を終えてロッカールームへ戻っていったはずの曹貴裁監督が、歩んでいく先をおもむろにピッチへと変える。視線の先にはクールダウンを終えて、引き揚げようとしていた選手たちがいた。
「選手を途中で変えた後のフォーメーションのこととか、確認しておかなきゃいけないことをその場で伝えたほうがいいかなと。今日で言えばシステムの噛み合わせや戦術的なことが、上手くいった部分とそうでない部分があったけど、最後は個人で判断して失点の場面などは防がなきゃいけなかったので」
指揮官に呼び止められたのは6人。キャプテンのMF菊地俊介、副キャプテンのGK秋元陽太、菊地と同期のMF石川俊輝と、齊藤未月、杉岡大暉、石原広教の18歳トリオ。チーム全体ではなく、あえてこの顔ぶれにとどめた点に大きな意味が込められていた。
ちょうどコーナーフラッグが立てられるあたり。コーチ陣が見守るなかで、体育座りしている選手たちに対して最後は中腰の体勢になり、大きな身ぶり手ぶりも交えられた熱弁は15分ほど続いた。
「後半に入ってシステムを何回か変えたんですけど、システムうんぬんではなく、相手のサイド攻撃に少してこずったので、それに対する守備の個人戦術の部分で少し話をしました」
異例にも映る夜空の下でのミーティングの趣旨を、菊地はこう説明した。前半9分に菊地の2試合連続ゴールで先制しながら、ショートパスを巧みにつなぎ、両サイドから攻めてくるFC岐阜に主導権を握られたままハーフタイムを迎えた。
ベルマーレとしても、特に相手の最終ラインやボランチでパスをつながれることは想定内だった。チーム全体として構えて、相手が前がかりになって攻めてきたところでボールを奪い、カウンターに転じる。戦い方をより鮮明にするために、後半開始からシステムを3バックから4バックに変えた。
「だけど、みんな前から行きたがってしまって……」
菊地が苦笑いしたように、骨の髄まで染み込んだ「前へ」の精神がプランをぎくしゃくさせる。迎えた12分。FC岐阜に先駆けて切った最初の交代カードで、曹監督はユース出身のルーキー石原を投入。システムを3バックに戻し、デビュー2戦目の石原は左ワイドに入った。