5大リーグで出場の夢に近づくも…待っていたのは2軍で出番を待つ日々
川島永嗣が積み重ねてきた日々の努力がついに実った。
現地時間18日、フランス・リーグ1(1部)第31節のパリ・サンジェルマン戦に先発フル出場。敗れはしたものの、メス移籍後初めてリーグ戦のピッチに立った。
川島は昨季所属したスコットランド1部(当時)のダンディー・ユナイテッドが2部へ降格したことにともない、同クラブを退団。夏に一度フリーとなって欧州内で移籍先を探した。そして昨年8月1日に2年契約でのメス加入が決まった。
当時、移籍先決定を報告したブログで川島は「ヨーロッパの5大リーグで日本人GKとしてプレーする、という夢に一歩近づくことができました。ここからはポジションを勝ち取るとこからスタートですが、Metzというフランスでも歴史のあるチームで、この新たなチャレンジが出来ることが心から楽しみです。道のりはまだまだ厳しいと思いますが、とりあえず、の選択肢ではなく、こういった本気のチャレンジができることに本当に感謝したいと思います」と、新たな挑戦への意欲を綴っていた。
しかし、待っていたのは第3GKとして少ない出番を待つ日々だった。トップチームでベンチ入りもままならない中、セカンドチームの試合が主戦場になっていく。
それでも昨年9月末、ロシアW杯アジア最終予選に向けた日本代表に招集された際、川島はブログで「まだなかなか試合に絡めない今の自分の状況から、日本代表に入るのは容易な事ではないと承知の上で、今はフランスでの挑戦の日々を過ごしています。1日1日が本当の勝負。そんな日々が今この瞬間を充実させてくれているのもまた事実です」とフランスで有意義な時間を過ごしていることを語った。
そして今年1月8日、ついにトップチームでゴールマウスに立つチャンスがやってきた。フランス杯のランス戦で、移籍後初めての公式戦先発出場を果たした。メスは0-2で敗れたが、川島にとっては大きな一歩だった。
試合後に更新した自身のブログでは「ようやくフランスでスタートを切ることができました。まずはまた一歩前に進む事ができました。ここからが勝負。まだまだ自分が思い描く姿には程遠いけど、ここからまた1日1日、自分を越えるために成長し続けるしかありません。しかし、やっぱり試合っていいな(笑)」と、デビューの喜びを綴った。
仏で見つけた「価値ある種」。ついに叶った夢の初出場
今年3月の日本代表戦は、川島にとってひとつの転機になったのかもしれない。24日のUAE戦、アウェイでの大一番でゴールマウスを任されると、スーパーセーブ連発でチームを救った。昨年6月のブルガリア戦以来、約9ヶ月ぶりに先発で高い経験値と実力を改めて証明した。
続く28日のタイ戦ではPKストップも披露。クラブで試合に絡めていなくとも、試合勘は努力で補えることをプレーで示した。川島はブログで「UAE戦が終わった後は、ロッカールームに戻っても涙が止まりませんでした」と明かした。
「公式戦に出るのは夏から数えて2試合目。少しのディテール、1つのミスがワールドカップへ繋がるかどうかという試合の重みは、今までの経験上、いやという程分かっています。とにかく、自分が積み重ねていることを全力で出そう。そう思ってピッチに立ちました。
いつも通り。でも試合が終わった後、いろんな想いが湧き上がってきました。試合に出られない日々、選手として表現する場所のないストレス、迷いを振り切り信じ続けること。うまくいかない時でも信じ続けてくれる人達のために、いつも応援してくれる人達のために、そしてすべてを分かち合ってくれている家族のために。多分、この涙は死ぬまで忘れない涙だと思います」
3月の日本代表戦を終えた直後のブログは、川島らしい、強い思いが乗った文章だった。そこにはPSG戦での出場につながったであろう、彼の生き様が記されていた。
「シーズンも残りわずか。でもこの1日1日の勝負の日々からしか、得られないものが今の自分にはあります。うまくいかない時もあるだろうし、辛いこともある。でも、その影には必ずそれ以上に値する価値のある種が隠れていると信じて、自分の道を信じて突き進んでいきたいと思います」
自分を信じて努力を続けてきた川島は、PSG戦でまた一歩、フランスの地に力強い足跡を刻んだ。昨年10月頃から度々ベンチ入りの機会はあったが、なかなか訪れなかったリーグ戦の出場機会。メスで探し続けた「価値のある種」をついに見つけたのかもしれない。
今回PSG戦でチャンスが回ってきたのは、正守護神のトマ・ディディヨンが疲労を考慮されてメンバー外になったことが理由だった。それでも先発メンバーに選ばれたのは日々の努力が認めれらたからこそ。どんな状況でも折れず日々を過ごしてきた川島の未来を信じる力が報われた1試合だった。
【了】