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アトレティコとレスターが示した新たな指針。パス成功率70%も…勝利を引き寄せる「真の巧さ」

text by 海老沢純一 photo by Getty Images

アトレティコの悲願は達成されるのか

アトレティコ・マドリーのディエゴ・シメオネ監督。彼の就任後、アトレティコは継続的に好成績を収めている
アトレティコ・マドリーのディエゴ・シメオネ監督。彼の就任後、アトレティコは継続的に好成績を収めている【写真:Getty Images】

 もちろん、レスターにとってみれば前半からこのような展開に持ち込むことが理想だったが、1stレグも2ndレグも沈黙した前半から戦術変更によって後半に立て直したシェイクスピア監督は高い修正力を持っていると言える。

 ただ、やはりこの2試合で明白となったのは、アトレティコの強さである。1stレグではエースのグリーズマンがPKでゴールを決め、2ndレグでは大舞台に強いサウールが決めるなど、“決めるべき人が決める”ことができる。

 さらに、守備力を高めるために先発起用されたヒメネスは、6回のタックル、7回のインターセプト、16回のボールクリア、2回のブロックショットを記録するなど守備で重要な役割を果たし、1点を奪ったレスターの士気を沈めた。その結果、データサイト『Who Scored.com』のレーティングで満点の10点を獲得。シメオネ監督の起用法は100%的中した。

 試合開始から相手の長所を封じ、弱点を突く分析力の高さ、目まぐるしく変わる戦況への対応力の高さ、どれを取ってもアトレティコがレスターを上回っていた。

 アトレティコというチームは、ある意味では特殊なチームとも言える。例えば、監督がボールをつなぐことを要求すれば高いレベルで実践することが出来るはず。しかし、そういった選手たちが技術的な「上手さ」ではなく、戦い方の「巧さ」を重視してプレーしている。

 シメオネ監督に率いられるチームは、このCLで準優勝、ベスト8、準優勝、そして今回のベスト4進出と確実な成績を残している。一方で、決勝で2度涙を飲んだことは苦い思い出となっているはず。今年こそ悲願を達成できるのか。

 Jリーグを含め、多くの指導者は「“しっかりボールをつなごう”と選手に伝えている」と語る。しかし、今後多くのチームの指針はボールをつなぎ支配することではなく、高い技術をベースに的確な判断と強烈な圧力で相手を封じ込めることにシフトしていく時代となるのかもしれない。

(文:海老沢純一)

【了】

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