憧れはチェフとカシージャス。左利きの守護神がチームを盛り立てる
ピッチ上では日本語と英語を混ぜながらコーチングしている。「左」「右」「上げろ」「下げろ」といった最低限必要な単語を覚えて、徐々に使っているという。日本のサッカーでは「ニア」や「ファー」のような単語も頻繁に用いられるため、そういった言葉の存在もウィフマンを助けているようだ。
23歳と若い新守護神のプレーはまだ荒削りで、課題も多くある。ダイナミックなセーブや高い身体能力を随所に見せてはいるが、YS横浜の樋口靖洋監督はウィフマンが秘めるポテンシャルの大きさに期待を寄せつつ「守備範囲の狭さ」を指摘した。細かいポジショニングやキック精度にも改善の余地を残す。
「日本人は小柄で俊敏性があって技術的に優れているという認識で、ヨーロッパとは違うフットボールをすると思っていた。実際に来てみたらその通りで、僕にとって簡単ではない」と、本人もサッカーそのもののスタイルの違いにいささか困惑しているようだ。
それでも常に高い意識を持って課題に取り組んでいるウィフマンにはペトル・チェフとイケル・カシージャスという憧れ続けるアイドルがいる。優秀なGKを多く輩出している母国ポーランドの選手でないことには「自分でもわからない(笑)」と苦笑したが、あくまで自分と同じ左利きのチェフとカシージャスがロールモデルだ。
「僕の人生や選手キャリアにおける目標というのはいくつもあるんだけど、将来的にはできる限り高いレベルで毎日プレーしたいというのが一つ。日本でも見つけなきゃね。たくさんあるから今後見せていければいいと思っているよ!」
J3第4節までを終えてウィフマンは4試合すべてにフル出場。ただYS横浜は8失点しており、最下位から2番目の16位となかなか結果が出ていない。それでも通訳なしで日本に飛び込んできたウィフマンは、飽くなき向上心をエネルギーとしてチームの力になろうと地道な努力を重ねている。Jリーグ移籍をキャリアにおける「大きなチャレンジ」と表現した23歳は、これからも大きな声で最後尾からチームを盛り上げ続けていく。
(取材・文:舩木渉)
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