香川の意識にこびりついた「恐怖心」。ファンへの感謝とともに再出発
8万人のファンとともに勝利したドルトムント。香川真司も90分間戦い抜いた【写真:Getty Images】
あの日以来、睡眠はあまり取れていない。
「日常生活もやはり、ここ1日、2日は落ち着いた感じはちょっとありましたけど。でも、まだまだ恐怖心であったり、ましてや標的になったわけですから、僕たちは。街ではなくてクラブチームという単体、と言ったら変ですけど。完全にね、僕たちが狙われたっていうのは、ニュースを見る度にね、恐ろしいことですし。なかなかチームとしては時間はかかりそうですしね、そういう恐怖心はあります」
自分たちの命が狙われたという現実。思い起こすようなことがあれば「恐怖心」が心の底から浮かび上がる。
だからこそ、事件の翌日のモナコ戦にも、4日後のフランクフルト戦にもスタジアムに詰めかけたファンの後押しには、感謝している。
「後押ししてくれる雰囲気を試合の90分間だけでも作り出してくれたのは、選手たちにとっても、その時間を本当に集中して戦える雰囲気をサポーターが作り出してくれているので。感謝しています」
爆発事件をピッチの中には関連づけたくないというのが、選手たちの本音だろう。できることなら、目の前の試合を純粋な試合として、集中して戦いたい。だから「集中して戦える雰囲気」を「作り出してくれている」8万人近いファンには、本当に感謝の気持ちしかない。
今、香川が願うこと。
「ファンも含めて、チームみんなでこの状況を支え合って行きながらシーズンを終えたいですし。そういう気持ちです。本当にファンと一緒に、この状況を支え合って行きながらシーズンを終えたい。そういう気持ちです」
苦境の中で連帯し、体験を共有する。そして、やり場のない怒り、嘆き、悲しみ、喜び…様々な感情を分かち合う。
フットボールそのものが、傷を癒すための手段でもある。
(取材・文:本田千尋【ドルトムント】)
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